【闇】バイオ研究室がブラックになりやすい理由と注意点
どんな分野にも理想と現実のギャップは存在すると思いますが、いわゆる「バイオ・生命科学研究」の世界ではそのギャップが大きいと思います。
この記事では元助教の私が、バイオ系研究室がブラックになりがちな2つの理由を説明していきたいと思います。
なお本記事では「バイオ系の研究方法の特徴」に焦点を当てて解説したいと思いますが、バイオ系の闇の部分としては、「需給関係の崩壊による就職難」もかなり際立っているので、そちらに興味のある方は以下の関連記事もご覧ください。
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生命科学系の実験はとにかく時間がかかる
実験系の研究で拘束時間が長くなるのはありがちですが、バイオ系研究の場合はそれが極端だと思います。まず、実験自体に時間がかかります。動物を用いた実験では、結果が得られるまで数か月とか数年とか。培養細胞の実験でも数日以上。週末休んでいたら実験スケジュールが組めなかったりするので、土日も研究室に行くのがデフォだったりします。
「バイオインフォマティクス」のような計算機中心の研究分野では、大学に毎日来る必要性も小さいと思いますが、生物自体を相手にする実験系の研究者は、土日含めて朝から晩まで研究室にいる場合が多いです。自分で進んで研究に取り組んでいれば苦でないでしょうが、そうでなければ普通にブラックだと思います。
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生命科学研究は賭博的要素が強い
この辺りの事情は関係者以外に分かりにくいと思いますが、バイオや生命科学の研究はギャンブル的な要素が強いです。理詰めで考えて特定の現象や法則が見つけられることもありますが、他の理科系の研究分野と比べると理論的な要素がかなり弱くて、恐らくその理由は、生命現象が依然ブラックボックスなところが多いから。逆に、「やってみたら面白いこと見つけた」的な面が強く、結果的には「数打てば当たる(はず)」という考えに陥りがちです。
「やってみたら面白いこと見つけた」は、「やってみないと何があるかわからない」の裏返しですし、これは悪いどころか科学の面白いところでもあるのですが、適度に取捨選択する余裕がないと、上述の「数打てば当たるはず」論理に頼った状態になりがち。研究初心者の大学院生は注意しないと、指導教員の指示でひたすら下手な鉄砲を撃ち続ける事態にもなり得ます。基本的にバイオ系には人が溢れているので、競争に勝つためのラットレースになりがちです。ハードワークは必要ですが、それに依存した競争方法では勝てる見込み薄です。
若手研究者にとっての注意点
実験結果は実験しないと得られないので、数をこなすのは大事ですが、時間のかかる博打的実験に労力をかけすぎるのは良くないです。大切なのはリスクの分散。「当たれば大きいが外れる確率が高い研究」と「当たりやすいがインパクトは大きくない研究」を並列するのが基本です。特にビッグラボの教授は、ポスドクや大学院生に「当たれば大きいが外れる確率が高い研究」のみを割り振る傾向が強いので注意しましょう。教授がそれを行う理由は、教授にとっては研究室の各メンバーに割り当てた博打的研究のうちのどれか一つでも当てれば元がとれるからです。(教授はしっかりリスク分散しているのです。)
教授がリスク分散している割に、ポスドクや大学院生個人がリスク分散できていない例がかなり多いです。トップ大学で、ハイリスク研究に100%の労力を割き、袋小路に陥っている若手研究者もたくさんいます。教授がそれを強制していることも多いですが、研究費のないポスドクに研究方針の決定権はありません。文字通り袋小路であれば、研究キャリア(博打)から降りるのも一案だと思います。
研究がギャンブル的なのは良くても、人生までそのギャンブルに賭けるのは、結構きついような気がします。全財産を賭ける前に、リスクヘッジはあった方がいいです。
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