多浪生や再受験生に不利でない医学部は?|合格者と受験者の年齢比を比較した!

再受験生や編入生、多浪生にとって「医学部の年齢」は気になるトピックだと思うので調べてみました。この記事では、公表された国立大学の各医学部の①受験生の年齢データ、②合格者の年齢データを元に、「年齢に寛容と考えられる大学」を挙げていきたいと思います。(文科省資料(PDFファイル)

これから医学部の受験を考えている人には参考になる内容だと思うのでぜひご覧ください。


多浪&再受験生の合格者割合は大学ごとに全く異なる

本当はもっと細かい年齢分布データがほしいところですが、統計データは「18歳、19歳、20歳、21歳、22歳以上」と区分されているので、22歳以上に含まれる、「再受験生」「多浪生」の内訳はわかりません。なので一括りにして、下記のグラフを作成してみました。(棒グラフは5年間の平均値を示し、エラーバーの上端と下端はそれぞれ「5年間で最も多かった年度の値」「5年間で最も少なかった年度の値」を示しています。)


グラフをみると、かなり大学ごとに差があり、一部の大学では22歳以上がとても多いです。

例えば、もっとも高年齢層が多そうな、滋賀医科大学では平均21%の学生が22歳以上で合格しています。さらに2年次から学士編入生(=大卒が条件なので22歳以上)が20人弱加わるので、とてもざっと見積もると滋賀医大では30~40%くらいの学生が22歳以上かもしれないです。年度によってはもっと多くなるかも。これは一般に思われている医学部イメージよりもかなり多いと思います。

受験生は自分の興味のある大学で22歳以上の比率をチェックすると良いと思いますが、傾向が目立つ大学を数えてみると以下のようになりました。

22歳以上の比率(5年間)が…
(1)毎年10%以上 5校
(2)毎年10%未満 22校

(3)毎年5%以上 21校
(4)毎年5%未満 10校

感覚的には、(1)と(4)の大学では入学したあとの年齢層の印象が違う感じもしますね(例えばグラフ右のほうの佐賀大と長崎大の違いです)。

このデータからは「高齢受験生の受かりやすい大学」の議論はできないですが、多浪生や再受験生(22歳以上)にとって「入学後に同年齢の同級生が多くいる大学」、逆に「自分だけ高齢という状況になりやすい大学」が存在すると言えるかもしれません。

多浪&再受験生の受験者比率も大学ごとで全く異なる

上述のグラフでは「医学部入試の年齢差別」とか「高齢受験者は入試で不利」などは全く議論できないですが、調査報告(文科省)のデータに「医学部受験生の年齢分布」も含まれているので、これも22歳以上の比率に着目してグラフにしてみました。

このグラフも5年間で最も少なかった値をエラーバーの下端、最も多かった値をエラーバーの上端に設定しています。グラフをみると、「22歳以上が多数受験する大学と、そうでない大学」が存在することが見て取れると思います。

ぱっと見の印象としては、受験生に占める22歳以上は10%前後から20%くらいの医学部が多いですが、一方合格者のグラフでは5%~15%という感じでした。なので、入試のセレクションによって22歳以上の割合が下がる傾向があるのは間違いなさそうです。少し分かりにくいので、受験者と合格者をまとめたグラフも作成してみました。↓


多浪&再受験生はどの医学部にも受かりにくいが、大学によりその程度は異なる

上の散布図は各点が大学を表していて、横軸Xには受験者に占める22歳以上の割合、縦軸Yには合格者に占める22歳以上の割合が示されています。もし合格率が年齢によって変わらないならば、縦軸と横軸の値は同等になるはずですが、グラフをみると、合格者(%)<受験者(%)となっています(Y<Xとなっています)。簡単に言えば、22歳の受験生は若い人よりも受かりにくい、ということになります。

「浪人を繰り返している人」が22歳以上には含まれるので、彼らの合格率が低いことは理屈通りとは言えます。ただし、大学によってX=Yの対角線からの距離が異なっていて、かなり大きく外れている大学もあって気になります。その大学名を記入すると以下のようになりました。

 

 

圧倒的に右下隅の大学が東京大学でした。東大では受験生に占める高年齢の割合が大きいですが、しかし彼らはなかなか合格できていない、ということになります。偏差値が高い大学で同じ傾向があるのでは、と思い調べてみたら、やはり、旧帝大医学部では22歳以上では「合格者(%)<受験者(%)」の傾向が目立っていました(X=Yの対角線から大きく離れていました)。

あまりこういう統計データを自分に当てはめるのは心地よくないですが、22歳以上の人は、無理して高偏差値大学を受験してしまいがちなのかもしれません(仮説は他にも色々成り立つと思います)。

では次に、反対に、22歳以上の受験生の合格率が高い医学部をみていきましょう。そういう大学は、高齢受験生に不寛容な可能性が低いかもしれません。

多浪&再受験生にお勧めしやすい大学

30代で入学した私の考えでは、受験校選びの際に年齢を気にしてしまう要因としては2つ挙げられると思います。

① 周りがみんな若くて自分が浮いてしまわないか。
② 自分が高齢なので入学試験(面接)で不利にならないか。

これら2つの要素から考えると、①を満たすために「できるだけ22歳以上の合格者が多い大学」が知りたいですし、②を満たすために「22歳以上の合格率が若い受験生と比べて低すぎない大学」を知りたいと思います。


恣意的ですが散布図のグラフ内に赤枠のようなグループ設定してみました(イメージです)。

A:22歳以上の合格者>10%の大学
山形大学・富山大学新潟大学・山梨大学・信州大学・三重大学・滋賀医科大学島根大学・九州大学・長崎大学熊本大学・宮崎大学・琉球大学

B:22歳以上の合格者/受験者>0.8の大学
山形大学・富山大学・信州大学・鳥取大学島根大学山口大学高知大学

私自身は意外だと感じたのですが、学士編入を実施している(=大卒者を受け入れている)大学に、必ずしも高年齢受験生が受かりやすいわけではないようでした(学士編入実施校に下線引きました。ひょっとしたら年齢自体はあまり気にされていない傍証かもしれないと思いました)。

この種の統計データを個人に当てはめる際は慎重になるべきだと思いますが、大学ごとの「合格者数」「受験者数」の毎年のばらつきは比較的小さいので、一定程度の信頼度はあるかもしれません。このデータ作成の元になっている受験生の性質を、これからの受験生も共通して持っていると仮定すれば(&大学による選考も変わらないとすれば)、確かに大学によって「22歳以上で合格しやすい大学/合格しにくい大学」が存在すると考えることはできそうです。

注:年齢差別の問題ではなくて、たとえば30人受験して5人受かる大学と10人受かる大学があれば、後者の方が統計的に受かりやすいと言えると思います。ここでは差別(セレクションの中身)の議論はしていないので、飛躍しないようにお願いします。

<追記>
私立大学についても同様に記事執筆中なので是非ブログチェックをお願いします!
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