ブルーカラーの生物研究者

一般に研究者は高学歴なのでホワイトカラーをイメージされるかもしれませんが、分子生物学・生化学の研究は身体労働的側面があるため「研究者はブルーカラーである」とよく言われます。筋肉を使う重労働とは異なりますが、とにかく手を動かせ・働け働け―、という価値観は強いと思います。

 

わたしの職場のボスが好きな言葉は、

「1日1時間多く働けば年間365時間、すなわち1か月分先に研究を進められる」とか、
「土日働けば、休んだ人よりも1.4倍早く研究を進められる」

とか、
一般企業ならブラック認定なセリフを金言のように語られるのが大学の研究室なのです。
(残業という概念自体がないので、当然残業代はありません。別に求めませんけど、念のため)
 

上記のセリフは間違ったことを言っているわけではないですが、現在のアカデミアは働けば見返り(ポスト)が得られる状況でもないです。若者(若い研究者)に長時間労働を強いようとするのは、日本が途上国だった時代に「働けば働くほど給料が増えた」を体験した会社の高齢者と同じマインドではないかと思われます。

生物学の分野でも、労働力勝負だった遺伝子クローニング全盛時代が過ぎ去って、ひたすら長時間労働する研究者が報われなくなっているのは火を見るより明らかだと思うのです。

 

現代では信じにくいことですが、遺伝子クローニングだけで有名雑誌に投稿できる時代が過去にありました。その時代の成功体験で教授になった人たちが一定数おり、「とにかく働け・労働時間を増やせ」傾向が顕著だと感じます。

遺伝子クローニング全盛時代には、遺伝子クローニングとタンパク解析の速さが勝負の決め手で、何をやっても新しかった時代でした。今でも遺伝子クローニングしたものを細胞株に導入してタンパク質解析、遺伝子改変マウス作成、という手順は分子生物学で基本中の基本ですが、そのやり方だけではあまりに平凡、確立された方法すぎます。そうした手法は平凡なため競争相手の絶対数が多く、それだけでは競争に勝てる見込みが薄いです。

しかも、労働力がモノを言うので、多数のテクニシャンや学生を投入できる大規模施設が有利と決まっています。それに勝つために個人の研究者相手に労働時間を増やせという、この司令官は正気か。教授の話を聞くわたしとしては、爆撃機を竹やりで落とせと言われているようです。
 

若い研究者に負け戦を強いるのはやめてほしい。分子生物学的な実験ばかりを、特に労働集約的に行っていては将来の役に立たない可能性が高いです。特攻する価値があるかは疑問です。


ちなみに、分子生物学で労働力重視傾向は世界共通だと思うのですが、私の見てきた範囲では、実際に働きまくるのは日本人(アジア人)に顕著なような気がします。(日本人でもさぼる人は多いし人に依りますが。)