つら楽しいポスドクの生活?

2017年11月、ポスドクの記事がヤフートップを飾っていてびっくりしました。「ポス・ドクえもん」さんが執筆した、「つら楽しいポスドク生活」という記事で、研究者のキャリアパスが結婚式での出来事と合わせて簡単に紹介されています。以下に一部を引用します。



ここ数年間で、ポスドク研究員の話題が一般に広まっている感じがしますが、ヤフートップにポスドクだなんて何だか感慨深いです。研究キャリアに興味を持ってくれる人が増えているとしたら喜ばしいです。

でも、やはり記事執筆者のポスドクエモンさんはポジティブ過ぎです。「つらくて楽しい(つら楽しい)」ポスドク生活と表現されていますが、ポスドクは、古くは2ちゃんなどで「ポス毒」と言われるくらい負のイメージが付きまとう立場です。

ポスドク(ポス毒)の負のイメージはポスドクの就職難と関連しています。「研究者のキャリアと処遇」(外部リンク)という記事によると、ポスドクから正規職(民間企業含む)への年移行率は6.3%と算出されるようです。これは若いポスドクも含めた数値ですし、最近は民間企業の人手不足もあるのでもう少しマシになっている感触ですが、ポスドクの就職が厳しいことに変わりはありません。

それでもポジティブなポスドクエモンさんによると、

ランチタイムには、「あそこの大学の公募見た?」「あの募集要項だと私の研究内容ではキビしいかな」「○○さんならイケるわよ~」と言った会話にキャッキャウフフと花を咲かせることになる

いや、そんなお花畑なポスドクを私は見たことないです(!)
これはポスドクの多数を占める生物・バイオ系の実情とは異なります。

ポスドク衛門さんは就活経験あるのでしょうか。私は民間企業就活では30社くらい落ちましたし、皆そんな感じです。ポスドク衛門さんは、最近結婚式を挙げられて明るい未来だけ描いてるのでしょうか。研究分野によるのかもしれませんが、少なくともバイオ・生物系でこの楽観具合はないな。ポスドク衛門さんはどこか違う世界のポスドクなんでしょうか。


もっと、切羽詰まったポスドクの訴えを引用してみます。

「月収20万、ボーナス無し、国保・年金は自分持ち。家族を養っており、経済的には限界に近い」(38歳)

「夫婦でポスドク。低賃金で、生活が苦しく、子どもを育てる経済的余裕さえない。早急な現実的な未来を求めている」(34歳)

これらはiPS関連で働くポスドクの訴えで、2015年の記事(「iPS細胞研究所の9割は有期雇用で不安定。正社員化へ頑張りたい」)からの引用です。


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