ポスドク問題・特任助教問題とは

「ポスドク問題」とは

昔は博士の学位取得後、助手として採用され、それから助教授、教授と昇進していくのが普通でした。もちろん業績足らずの人は万年助教だったりもしたのですが、それほど多くありませんでしたし、彼らも終身雇用だったので途中でクビにされることはなかったのです。

しかし、大学院重点化政策によって博士取得者が大量生産されたため、2000年頃から博士余りの状況になりました。博士の就職先は大学の中にも外にも少なく、特に、数少ない大学教員のイスを奪いあう状況が顕著になりました。一般に、大学教員のポストに就けなかった博士が研究室・研究機関に短期の契約研究員として雇われているとき、彼らをポスドクと呼びます

ポスドク採用はあくまで「短期の」契約であるという建前であり、大学教員として赴任するまでの、数年間のいわば研究トレーニング期間として認識されています

つまり、一般的なキャリアパスとして、

[昔のキャリアパス]
大学院修了(学位取得)
→ 大学教員(助手)

であったのが、

[2000年頃以降のキャリアパス]
大学院修了(学位取得)
→ 一次的な契約研究員(ポスドク)
→ 大学教員(助教)

となりました。

昔の「助手」に該当する立場が現在の「助教」です。助教は大学教員の下っ端で、通常、一番初めに就くポジションです。博士余りで就職できない人が多数なので、「助教」ポジションに就くまでのつなぎとして「ポスドク」と呼ばれる立場があるのです。

ポスドクは1年ずつの更新、合計で数年程度の雇用が想定されている場合が多いです。ポスドク後の就職は全く保証されていませんが、研究で成果を挙げれば他大学で次の仕事(ポスドクか助教)を得られるもの、と認識されており、そのために皆努力することが期待されています。助教になれば、定年まで働けるのが一般的であったので、皆これを目指しました。

しかしながら、実際のところ,

  ポスドク
→ (別の場所で)ポスドク 
→ (別の場所で)ポスドク
… 無限ループ

の、パターンが大多数になってしまいました(!)

「研究者のキャリアと処遇」(外部リンク)という記事によると、2010年頃のポスドクから正規職(民間企業含む)への年移行率は、わずか6.8%と算出されるようです。このように、不安定な身分であるポスドクから抜け出せない若手(現在はもう高齢)が続出したので問題視され、これを「ポスドク問題」と言います。


最近は「特任助教問題」に変化してきたらしい

ところが、最近では大学教員の雇用も流動的で不安定になっています。任期が数年単位であることが多いです。雇用の流動性自体は、若者が複数の職場で多様な技能を身に着けるという理想(タテマエ)や、能力のある人物が能力を発揮する(=能力のない者は職場を去るので入れ替わることができる)という目的のために効果はあるとは思います。しかし、それらは後付けの理由に過ぎず、実際は、雇用主である大学側が財政的に切り詰められているため、新規の長期雇用を躊躇うというのが若手教員の雇用が不安定になっている原因です。

そんなわけで、正規の大学教員(助教など)であっても任期付の場合が多くなっており、さらに「特任教員(特任助教など)」と呼ばれる、「特別に任命された(=特任の)教員」の数が高くなってきています。特別に任命されたというのは何か本人がスペシャルスキルを持つかのような感じがしますが全く違います。本当は「今回特別に任命するだけだから短期で契約が切れるよ」というニュアンスです。

特任助教も一応教員なので「~先生」と呼ばれるのですが雇用形態的にはポスドクに近いです。こうした不安定な雇用形態の教員が増えており、最近の若手研究者は、

[最近のキャリアパス]
大学院修了(学位取得)
→ 一次的な契約研究員(ポスドク)
→ 大学の契約教員(特任助教)
→ 大学教員(助教)

という風に、ますます大学の正規の教員(助教)への道が遠くなっています

最近はポスドクの増加に歯止めがかかった一方、若手研究者の雇用の不安定さは相変わらずなので、増加した特任助教の名を付して「特任助教問題」などと言うようです。

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