医学部学士編入の英語対策はどうするべきか

英語は、生命科学とともに最重要となる科目ですが、生命科学と比較すると暗記の要素が小さいため、「時間をかけて勉強しても学習効果が表れにくい」という点が厄介になると思います。

また、出題される英文はほとんどが科学論文であるので、向き不向きの問題も出てきます。



医学部編入の英語試験の特徴と対策

学士編入の英語が対策しにくい理由として、以下の3つがあると思います。

 ①英語論文の形式への慣れが必要
 ②生命科学の知識が必要
 ③内容を日本語でまとめる日本語スキルも必要

また、一般の大学入試と異なり、細かい文法問題・単語チェックはあまり出題されず、文章の大意を読み取る力の方が問われやすいです。

上述の①~③のそれぞれについて説明した後、私が考える対策方法を順に書いていきます。


①英語論文への慣れ=
理系の大学院生や修了生で平均的な英語力があれば、レベルとしては十分だと思います。もしそうでなければ、論文を読んで、重要な記載を素早く読み取ったり、文章構成の展開に慣れる必要があり、これに時間がかかると思います。

たいてい、ある程度まとまった内容を含む長い文章が出題されます。必ずしも、内容の100%読解できるレベルは要求されませんが、どのパラグラフに何が書いていて、それが全体の主張の中でどのような意味・論理関係を持っているか、把握できる程度の英語力は必要になると思います。

②生命科学分野の知識=
生物系の学部や大学院を出た人が、英語試験でも有利になりやすいです。臨床医学の話題も出るので、その場合は医療系の受験生にとっても解きやすいかもしれません。

文中に答えがない問題が出る場合も多いです。例えば、「文中下線部では~と言っているが、この事例として、あなたの知るところを日本語(英語の時もある)で書け(50字以内)。」という形式の出題です。

文中に答えがない生物学知識を書かせる問題では、まったく白紙になってしまう受験生も多いと思います。特にこれを英語で書かせる問題は、編入試験で差が付きやすいところだと思いますが、博士課程以上の学生なら(論文執筆などで)普段やっている作業であり、おそらく特別な対策は不要です。


③日本語でまとめる能力=
大学で真面目にレポート課題や卒業論文をこなしていたら、それほど苦労することはないと思います。逆に、海外在住が長いと苦労するようです。英語のできる生物系の帰国子女にとっては、ある意味、医学部編入の試験は日本語力試験になっていると思います。

日本語力については、ほとんどの人に基礎能力があると思うので、大変な苦労はないと思いますが、多少の記述練習はやった方がいいと思います。「〇〇字以内で書け」と言われたときに、どれだけの情報を含められるかとか、記述にどれだけ時間がかかるとか、感覚的なものも身につけておきましょう。


以上の①②③をまとめると、もっとも有利なのは、「日本の生物系の大学院の修了者」であると思います。私もそうだったのですが、この場合は、平均的な英語力があれば対策はほとんど不要です。

そうでない人にとっては、上で挙げたように、①論文への慣れ、②生物学知識の拡充、③日本語でまとめる練習、の3点は意識しておくべきポイントになると思います。


英語試験の対策方法

「実際の論文を読んで要点をまとめる練習をする」という勉強法も可能ですが、かなり時間がかかる方法です。

根本的な対策にはなりませんが、対策が難しいので、英語の苦手な人の代替案として「生命科学+英語の二科目型試験の大学を避けて受験することで、相対的な英語の配点を下げる」も、賢い選択かもしれません。しかし、それでも依然英語の重要度は高いので、避けては通れません。結局、英語が苦手な人は、ある程度英語対策に費やす時間が必要になってくると思います。

読む練習になる雑誌として、お勧めできる例を挙げると、

・臨床系なら、NEJM
・基礎医学系なら、Nature
(”Research”カテゴリの記事は専門家向けなので除いてください)

などは信頼できますが、大学などに属していない限り、なかなか無料で読めないことが大きな問題になります。

無料で読める雑誌では、PLOS~の雑誌が有名で、ここでReview, Perspective, Opinion, Essay, Editorial, などのカテゴリで、興味のある記事を探してみるのもいいかもしれません。(ここでも、”Research”の記事は除いてください。)

ただ、全くの初心者からのスタートですと、慣れるのに時間がかかると思います。状況によると思いますが、英語+生命科学の二科目特化型の受験校を避けた場合、たいてい一般入試と受験科目が近くなります。とすると、いっそ英語が大の苦手という人は、「編入試験にこだわらず一般入試も選択肢に入れる」ことを考えてもいいかもしれません。


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追記:
市販の本で勉強するとしたら、改訂版 最新 医歯薬系入試によくでる英単語600や、医学部編入への英語演習は役に立つと思いますが、学士編入では帰国子女や研究職の人など、「英語対策をあまりしなくても受かってしまう人」がライバルになることについては心に留めたほうがいいと思います。

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