もっと研究医志望の学士編入生をリクルートする案

医学部学士編入の募集要項に、「研究医志望者がほしい」と割とはっきり書いている大学も多いですが、その割に研究医増加には成功していないように思います。

この記事では、私が思う研究医を増やす方法について、好き勝手に書いていきたいと思います。特に、地方の中堅大学くらいで、基礎系ラボに医師人材がいない医学部を想定して書いていきます。



編入試験の内容をもっと詳しく周知させてほしい

特に、生物と英語中心の受験勉強で対応できることをもっと宣伝してほしいです。生物・英語特化型の試験を課している大学の過去問を見て、あれを難しいと思う生物系学生はいないです。大学院生以上ならむしろ簡単と言っていいレベルだと思います。河合塾KALSやネットに散在する経験者ブログが「医学部編入大変だった!」という話を拡散していたりするけども、生物学を専攻していたら全くそんなことはないので、(内容まで)正しく情報が伝わっていないのが現状だと思います。

河合塾KALSが大学生協なんかに来て「医学部編入○○コース」と大々的にやっている宣伝、ちょっと控えてやってほしい感じ。私が最初にあれを見たときは、「たくさん勉強しないとダメなんだ。大変そう。無理そう」という印象を持ちました。全然そんなことありませんから!

編入試験の受験生の学力水準は低めです。出身学部の偏差値よりは(一般入試の)偏差値が高い医学部に編入可能だと思います。生物系の研究志向のある学生は、ぜひ英語・生物特化型の大学の過去問をチェックしてほしいです。(参考→医学部学士編入の生命科学と受験校選び医学部編入の難易度と倍率の実態


編入生への財政的支援を明記してほしい。

私の知る限りでは、あくまで各研究室の裁量で、ある程度研究ができる編入生が個別にアルバイトとして研究室に雇われている場合が多いと思います。大学院を出た後に医学部に編入する、研究志向のある編入生にとっては、研究室で働いて給料をもらえることはかなり重要です。できればウェブサイトなどの公開されている情報のどこかに、下記のように記載してほしい。「修士卒以上の編入生を募集し、リサーチアシスタント(RA)として医学部のいずれかの研究室に配属されるものとする。月額の給与は~」

研究志向の学生に来てほしいということは、医学部は大学院(修士)修了程度の受験生を期待しているとみていいと思います。ですが、研究経歴のある学生ほどお金がないんです。博士課程まで行けば借金まみれ。その状況で医学部に入りなおしたら、借金(奨学金)1000万を超えます。生活苦と隣り合わせなので、それに拍車をかける医学部編入という選択は選びにくくなっています

医学部では非医師研究者の経済的な不安が過小評価されていると感じます(非医師研究者の苦労を知っている人は多いですが、かなりぬるく想像されている印象です)。例えばRAとしてバイト代程度が与えらえることを周知すれば、研究経験のある大学院生やポスドクが医学部編入を目指しやすくなります。医学部としても、ポスドクを雇うよりも安上りの研究補助・研究者が手に入り、しかも将来の研究医候補の育成につながるのだからウィンウィンだと思うのです。

研究医を目指す医学生がほとんどいない現状では、各大学でよくやられているような、医学生全員を無理に研究室に一定期間配属させるプログラムは、費用対効果が小さいと思います。疲弊気味の基礎系ラボでモチベーションの低い医学生に一から実験手法を教えるより、研究経験者の編入生を雇って育てる方がお互いのメリットが大きいのではないでしょうか。(短絡的に、投資効果だけで考えた場合です。)

また、借金まみれの状態で医師免許を取得した編入生は、早くそれを返還したい気持ちが一般生よりも強い傾向のはずです。しかも総じて高齢、お金の不安から解放されたい欲求が強いので、卒後は研究よりも臨床メインに進もうとする気持ちが高まります(私もです)。もし本当に研究医が増えることを編入学制度で期待しているなら、現状は逆の結果になりやすいと思います。

以上。

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