研究者が医学部編入を目指す意外なメリット

研究志向のある人が医学部学士編入を目指す際のメリットを3つ紹介します。2番目と3番目はあまり知られていないと思います。特にバイオ系研究室の若い人を対象とする内容です。


専門分野の経験を活かせる(受験でも活かせるし、合格後も活かせる)

まず受験では、生物系研究者にとって「医学部編入試験は簡単」なので、他の人と比べてあまり苦労せずに合格できるのがメリットです。入学してからも、研究の経験が医学を学ぶ上でプラスに働くと思います。さらに、現在日本では研究医が不足しているため、将来基礎医学研究の分野に進む場合は卒業後のキャリア形成の上でも有利に働きそうです。

試験対策などについても、他の記事で色々解説しています。よかったらご覧ください。

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受験勉強が今の仕事でもプラスになる・予備校教材は学生教育の参考になる

これは私にとって予想外だったのですが、編入試験の対策は本業の役にも立ちます。受験勉強の中心は生命科学の総復習なので、これが生物系の研究にプラスになりうることはある意味当然かもしれません。ただ私の場合はそれよりむしろ、学生に教える際の参考になると感じました。

博士課程・ポスドクや助教を辞めて医師になろうとする人が(たぶん大学教員を目指す)本業への好影響を気にしては変かもしれません。でも「とっつきやすい」ことに間違いないです。例えば「数か月だけ受験勉強に時間を割いてみて、やっぱり断念した」となっても、その勉強内容は大学教員を目指すキャリアのために役立ちます。なので、とりあえずでも挑戦する価値が高いと言えると思います。

予備校の「医学部編入のための生命科学」的な本はとても優れていました。プロが「20代の学士を対象者として作った教材」なので、平均的な大学教員が作った授業資料(私が習ってきた生物学講義)よりもずっとよく整理されているし、学生にウケる小ネタも多く(さすが予備校)、参考になりました。私は大学で講義を担当しない助教でしたが、実験実習などで学部生に教えているときには役立ちました。


仕事を辞めやすい(裁量労働の悪用も可能、アカデミアでは転職はありふれている)

裁量労働制の悪用についてはおススメしませんが、一応「最悪の場合も何とかなる」というポジティブな理解でいいと思います。大学の教員(特任教員を含む)の雇用形態として一般的な、「裁量労働制」の場合、自分の裁量で1日1時間出勤していても別に咎められないことになっています。もちろん成果を出していなければ次年度以降の給与に影響しますが、退職して医学生になるのなら関係ありません。

だいたい、入学の前年度の8月以降に合格発表があるので、半年くらいは精神的に楽に過ごせる可能性があります。

日本の一般の会社であれば、

・今年度での退職を申し出た瞬間嫌がらせが始まる。
・(嫌がらせを避けるために)直前に退職を申し出ると、周りに迷惑をかける。

という事態が心配になるのですが、研究者、特に裁量労働制の職であればこんな問題は起こりにくいでしょう。編入試験に合格したら、次年度から他の人が雇われる可能性があるので、迷惑を避けるなら数か月前には申し出しましょう。裁量労働制なので、もし嫌がらせを受ければ出勤を極限まで減らせばいいです。ですが、上司側も部下にそれをやられたら困るので、嫌がらせしにくいはずです。
(注意:ポスドクの場合は退職申し出は少し遅めの方が安全だと思います。人件費の出所にも依ります。)

医学部に編入しても、研究を続けて、教授を目指すキャリアは可能なので、周囲も反感を覚えにくいと思います(妬みは受けるかもしれませんが)。そもそもアカデミアでは数年単位の転職が普通なので、雇用主側にとっても恐らく想定内。教授の人間性によっては嫌な顔されるかもしれませんが、それによる悪影響は相対的に小さい仕事だと思います。