医学部再受験と学士編入はどっちがいい?メリット・デメリットの比較
医学部に入学してからのキャリア設計の視点で考えれば、1年ないし2年の学生生活を節約できる「学士編入」のほうのメリットが大きいですが、この記事では、あくまで受験対策する上のメリット・デメリットに絞って説明していきたいと思います。
再受験は勉強すべきことが明確なので、自信があれば取り組みやすい。
過去に大学受験を経験した人が再び試験を受けるのが「再受験」であるので、試験がどんな内容が見当がつくと思います。
なので、再受験を選ぶ第一のメリットは、
・明確な合否基準。一度経験したからこその安心感。(再受験メリット)
だと思います。偏差値的に国立医学部と同じ水準の他学部(主に東大・京大)の人で、受験の感覚を失っておらず、やる気を維持できれば確実に合格する力があると思います。そして本人もそれを確信できると思います。「何を勉強すればいいか」を既に経験し、分かっているからです。
実際、再受験で医学部に入学した人に、なぜ学士編入試験を選ばなかったのか尋ねると、
・選考基準があいまいで、編入試験はわけがわからない。(編入デメリット)
と、ほとんどの人は回答します。学士編入では倍率がすさまじく高い(ようにみえる)ので、それも受験を躊躇する原因の一つになっています。
逆に、再受験のデメリットとしては、
・やるべき勉強が膨大で労力がかかる。(再受験デメリット)
という点が挙げられると思います。やるべき勉強は分かっているけれども、その量が多くて負担が大きいのです。一方の学士編入では、一番シンプルな試験科目構成なら「生命科学+英語」というふうに2科目だけですから、一般入試の再受験で「数学・英語・理科+センター試験」の対策が必要になるのよりずっと少ないです。
定職に就いている人にとって再受験の受験勉強は結構大変で、特にセンター試験・二次試験直前は仕事と両立が難しいと思います。私の知る範囲では、年度末退職ではなく、試験半年前などに退職していた人が多いです。勉強する量が多いことによって、仕事との両立を難しくなるので、これは再受験のデメリットになると思います。
学士編入は試験科目が特殊なので、条件に合う人にとっては易しい。
再受験と比べると、医学部学士編入では受験科目が圧倒的に少ない点がメリットです。生命科学と英語の対策を中心にして、(志望大学の受験科目に従って)理科や数学の対策をすることになります。
この形式なので、学士編入のメリットとして、
・受験科目が少ないので全体的に必要な労力が少ない。(編入メリット)
・試験科目が大学によってかなり多様なので自分にあう受験校を選べる。(編入メリット)
が挙げられると思います。また、受験時期がバラバラなので、
・複数校受験が可能で失敗リスクを分散できる(編入メリット)
ということは言えますが、逆に、
・複数校受験にはお金がかかる。(編入デメリット)
・編入試験は特徴的で情報が少ないから予備校に依存しがち。不安になりやすい。(編入デメリット)
も成り立つかもしれません。再受験と違って、過去の自分の偏差値をあまり当てにできないので、客観的に自分の能力を分析して、情報収集しつつ合格のために対策できる人が編入試験に合格します。金銭的なデメリットについては、1, 2年の学生期間を節約できるのですから、それほど気にしなくてもよい気はします。
合格後のことを考えると、学士編入の試験勉強のほうが医学部入学後の学習につながりやすいです。編入の場合、生命科学試験の中心は分子生物学・細胞生物学ですし、英語試験も医学論文の読解が主なので、勉強が退屈になる可能性も少ないはずです。勉強内容として、高校生の勉強をやり直す「再受験」よりもモチベーションを維持しやすいと思います。
・入試の勉強が医学部での勉強につながりやすい。(編入メリット)
これを別観点から言うと、私みたいな基礎生物学の研究職だった人は、「仕事と関連付けながら」入試の勉強することも可能なので、受験勉強にあたりそれほど苦労する必要がありません。
まとめると、受験生の属性によって有利になったり不利になったりするのが医学部学士編入の試験です。
なお、学士編入の受験を躊躇う理由として「あまりに高い倍率」ということがよく挙げられますが、あまり正しくないです。上述のように、「試験科目が少ない」「客観的な合格指標がない」「複数校受験が可能」という性質のおかげで、見かけ上の倍率が高くなっているのです。
「試験科目が少ない」→簡単な対策でお試し受験する人が多い。
「客観的な合格指標がない」→イチかバチかで受験する人が結構いる。
「複数校受験が可能」」→倍率が実際の数倍まで膨れ上がる。
①【大人の医学部受験】元医学部教員の医学生が「学士編入」をゼロから詳しく解説
→ 医学部編入に必要な情報を網羅しています。
②医学生向け研究の始め方・取り組み方ガイド(医学生・学士編入志望者に有用)
③私が大学教員を辞めて医学生になった経緯(研究関係者・学士編入志望者に有用)
体感的な倍率としては、高くても数倍程度です。合格者の属性に特徴があるので、こちらの記事(医学部学士編入生と再受験生の合格者の経歴まとめ)が参考になるかもしれません。「再受験か編入の選択」は自分自身の客観的分析と情報収集がカギになると思います。当ブログの情報、他の記事も参考にしてみてください。