大学院生はお金がない。収入源は?

生活のためにはお金が必要ですが、大学院生はどのようにそれを得ているのでしょうか?

大学院生のお金周りの実際について、修士&博士の経験者が記事執筆します。


大学院は金銭的に損な場合が多い

シンプルに考えると、大学院生は経済的に考えると損しています。一般に高学歴な人たちが大学院に進学するので、もし会社で働いていれば高給をもらえていそうなものですが、逆に彼らは学生として学費を払っています。実験系研究室に所属していれば、ラボスタッフの業務を手伝っていて、さがなら「無給労働者」みたいな毎日です。

大学院で頑張った見返りとして、支払った学費と機会損失分に相当する何かが得られればいいのですが、教授は学生教育に無関心な場合が多く、対価が得られる可能性はかなり疑わしいです。工学部などでは、教授推薦で有名企業に就職できる場合もあるので、その場合は「大学院進学が得」だったりもしますが、生命科学系であれば身に付くスキルも企業で求められないものが多いため、圧倒的なマイナス収支になると思います。


一般的な収入源はRA,TA,学振

大学院に在学している期間のお金の出どころとしては、
・日本学生支援機構の奨学金(事実上の学費ローン)
・リサーチアシスタント(RA)やティーチングアシスタント(TA)

が挙げられます。

一部の恵まれた大学院生は博士課程から「日本学術振興会の特別研究員」として給料をもらえたりします(通称「学振」)。RAやTAであれば、毎月2万円から10万円ほどでしょうか。金額は予算の出どころによっても変わります。大雑把に言えば、大学院やラボ運営者から見た「人件費」を学生に支払うという形式を取るので、予算が潤沢な旧帝大で有力ラボに所属しているほうが、この種の経済支援の金額が上がりやすいです。この意味でも学歴ロンダリングはお勧めです。


アルバイトに時間を割くのは難しい

大学院生のアルバイトは普通おすすめできません。「アルバイトに時間を割くくらいなら研究を進めよう」が普通の感覚です。生物系の場合、バイトしなければ生活できないのであれば、さっさと民間企業で就活すべきです。生物系の大学院ではスキルが身に付かないので、若いうちに就活したほうが断然有利です。時期を逃せばポス毒コースが確定してしまいます。

例外は医師や薬剤師の博士課程学生が資格を生かしてアルバイトすることくらいだと思います。医師は時給数万円でも短期バイトが可能ですから別世界。薬剤師は時給2~3000円が一般的なので大学院生の忙しさを考えるとやや微妙な気もします。社会との接点を持つ意味では有効かもしれません。

実家からの仕送りをもらっている人も多いです。修士課程なら結構いて、博士課程になっても仕送りで生活している人もいるようです。修士課程の2年間なら200万円くらいあれば学費と生活費を賄えそうですが、それが博士課程まで続くと結構な総額になります。多い人で、学部時代からの奨学金(学生ローン)が1000万円に上ったりします。学位をとって優良企業に就職できればよいのですが、そう上手くいくのもごく一部の人です。理想はともかくとして、お金の心配をする人は生物系の大学院に入らないほうがよいです。特に博士課程はギャンブル的です。

経済の原理だけで人生を考えるのは理性的ではないのですが、ずるずる学生を続けていると将来の経済的破綻リスクが高まります。最低限の生活を維持できる将来的な見込みがなければ、落ち着いて研究などできません。

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