博士の就活(民間企業)

ただでさえ生物系専攻の大学院生の就職は大変ですが、博士課程の学生はもっと苦労します。30歳手前の新卒学生に対して社会が持つ印象はよろしくありません。何か即戦力になる技術・能力を持っていない限り極めて不利な状況です。しかし、ポスドクよりはまだ仕事を見つけやすいのも事実です。

基本的には博士学生も修士課程の学生と同時期に同様のプロセスで就活を進めるわけですが、厳しい条件での就活にならざるをえません。会社はあくまで新卒者の年齢をみて、相応の採用価値があるか否かを判断するわけですが、博士卒の年齢になるとすでに30歳手前ですから、それなりの即戦力を求めることになります。

残念なことに、日本の大学院の生物学系の研究で身につくスキルや知識の中で、民間企業で役立つようなものはあまりありません。そのため、ほとんどの博士課程学生は即戦力になるような能力は持ち合わせていません。実に不条理ですが、博士課程に3年間在籍して、年をとっていることが日本社会では大きなマイナス点として扱われてしまいます。

また、生物系の博士課程学生は社会からあまり必要とされていないだけでなく、そもそも就職活動をやっている暇がありません。就活時期は学位論文の投稿やリバイス実験などで忙しい時期に重なることが多いです。タイミングが悪ければ、就職できたけれども学位は取得できなかったりします(それでも就職できればラッキーといえますが…)。

加えてラボの教授は学生の就職活動で研究がおろそかになることを普通は快く思っていません。民間の会社でも教授の「推薦書」を就職時に求めることがあるので、あまり敵に回さないようにしなければなりません。学位の認定にも教授の協力が絶対的に必要です。

学位取得に関しては、民間企業はあまり重視していないところが多いので、就活が確実にうまくいくのであれば犠牲にすることも時には理に適っています。就活時に学位を取っておくメリットとしては、博士学位未取得であればポスドクにさえもなれませんから、「就活に失敗した時の最終手段として、ポスドクになる進路を残しておくため」に学位は取っておきたいと考えるのもあり得ます。

総合すると、学位は博士課程に進学した主要目的である点で重要と言えますが、日本社会では固定された就活シーズンに新卒学生は就職活動するのがデフォルトなので、たとえ希望企業に就職できる見込みが薄くても「新卒カード」を使わない手はないと思います。学位をとるためにオーバードクターするのは、アカデミアしか眼中にないなら構いませんが、そうでもないならさっさと見切りをつけるべきでしょう。