医学博士とは何?メリット・給料・年齢は?

お医者さんの名刺や経歴を見ると、「医師・医学博士」という肩書がよく目につきます。

「医師」はよく知られた資格だと思いますが、「医学博士」とは何でしょうか。患者からみたメリットはあるのでしょうか?このページでは「医師の医学博士」について詳しめに説明していきます。

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患者からみてどうなの?すごいの?

「医学博士」の称号は、大学院に入学して医学研究に取り組み、一定の研究成果を挙げた者に対して授与されます。研究能力についての証明書になるので、一般的には、患者から見たメリットはあまりないと言われています。もしかしたら、大学病院などで難病研究に取り組む医学博士の医師などの場合は、その病気に罹る患者さんにとって頼りになるかもしれませんが、そういうのは例外的だと思います。また、医学博士の先生は、過去の一時期に医学研究に携わったということを意味するので、ひょっとしたら科学の話に強かったり、最新治療を取り入れる姿勢が強かったりするかもしれません。でも、一般クリニックの診療レベルで何かメリットがあるとはあまり考えられていません。

さらに、医学部の大学院では、あまり研究に真剣に取り組まなくても、医学博士の学位が授与される傾向があります。医学部以外と比較して「研究者になる!」というモチベーションで大学院に進学することが少なく、どちらかというと「経歴に箔をつけたい」ために医学博士になる医師が多数です。ひどい例だと、実験はほとんど製薬会社の研究員(=大学と共同研究している)にやってもらい、論文はほとんど教授に書いてもらって、それで医学博士になれると聞きます。国立大(特に旧帝大)の大学院は比較的にはしっかりしている印象ですが、怪しい大学は結構怪しいです。

なので、医師の経歴の最終学歴が「~大学院で医学博士取得」になっていても、それだけで優秀だとか賢いとか意味するものではないです。どちらかというと「卒業大学」の方が気にされているような感じがします。偏差値重視だったり、特に歴史的な大学の「格」というものも医学部の世界には存在するようです。

最近の若い医師にとっては、「医学博士」よりも「〇〇専門医」を取得するのが人気らしいです。こちらの称号は、(研究ではなく)〇〇分野の臨床の経験を意味しているので、医学博士の肩書よりは参考になるかもしれません。ただし色々な「〇〇専門医」が乱立しているので、専門分野の異なる医師を比べることはできません。あと、医師の年齢や経歴が大きく異なる場合も比較は困難だと思います。


医学博士の年収・給料は?

医者の稼ぎ方の分類としては、自分でクリニック等を経営する「開業医」と、病院などに雇われて働く「勤務医」の2つに分けるのが一般的です。どちらの場合でも「医学博士」だからといって年収が増えたりしません。開業医の「医学博士」だと患者さんから凄いと思われて、来院者が増えて収入も増えるような気もしますが、そんなデータは見たことないです。あまり効果はないのではないでしょうか。

病院などで勤務して働く場合も、医学博士の有無は給料に関係しませんが、地位を上げるために医学博士であることが必須だったりするので、それが開業医とは違う点かもしれません。医学部の教授は、基本的には「医師かつ医学博士」と決まっている大学が多いです。(例外として、基礎医学領域では稀に「医師でない〇〇博士」が教授になっていたりしますが、いずれにしても、博士の学位が必須です。)

具体的に金額を挙げるのは難しいですが、国立大の医学部では教授になってやっと年収が900~1000万前後に到達する一方、「開業医」だったら平均年収が数千万円くらいだそうです。大学の勤務医はアルバイト掛け持ちでプラス数百万くらい稼いでいることが多いと思いますが、それでも開業医との収入格差が大きいので、医師にとって「医学博士を取って大学で上を目指すキャリアは割りに合わない」らしいです。(私はこれを聞いて意味がわからなかったのですが、要するに医者にとって「頑張っても1000万円ぽっちじゃ不満だから研究を続けるのは嫌」ということだそうです。)



医学博士取得のメリットは?最近の医学博士事情はどうなの?

金銭的には、「医学博士」になるには大学院で学費を払って研究しなければならず、しかも医学博士であることは収入増に直結しないので、あんまりメリットがありません。金銭メリット以外で、医学博士取得の動機になりうるのは:

(1)単純に、研究者になりたいから。
(2)大学や病院で、将来上のポストに就きたいから。←ちょっと微妙?
(3)経歴に箔をつけたいから。←微妙?

ということが挙げられると思います。(1)については当然と言えば当然で、「博士」の学位は研究者の運転免許証なので、これを取らないとキャリアが始まりません。基礎医学研究の分野では、バイオ系博士(=医師ではない医学博士など)が大量にいて過当競争になっており、医師にとっても、臨床医になるよりは競争が激しめだと思います。しかしここは、医師免許の強みを生かしてぜひ挑戦的な研究でもやってほしいと私は思います。これは元バイオ系の研究者(非医師)として私が強く感じるところです。

一方で、臨床寄りの教員とか、病院のポストに就くときの医学博士の要求度は、今後どうなるかわからないような気もします。最近は「医学博士」を目指す若い医師がとても少なく、私の周りの人では優先度が「専門医>>>博士」というのが半ば常識になっているような感じがあります。

昔は医師のキャリアの過程で、医学博士を取得することがもっと一般的だったようで、こちらのページ(m3.com医療維新2016年11月24日の記事)によると、現在の50歳以上の医師の60%以上は医学博士らしいです。最近は「医学博士」取得の人気が下がっているので、ひょっとしたら近い将来、「医師+医学博士」が今より希少な存在になるかもしれません。