医学部、医学生のデメリット&医者のメリット

医学部のカリキュラムは独特なので、良い面もあれば悪い面もあります。この記事では、二度目の大学として医学部に入った私が思う、医学部のメリットとデメリットについてまとめてみたいと思います。



医者にしかなれない、は間違い。むしろ何でもできる

「医師にしかなれないのが、医学科のデメリット」という主張も散見されますが、あまり正しくないと思っています。「医師免許さえ取れれば、結構何にでもなれる」という方が正しいです。理由は3つあり、大きい順に:

・医師免許の強力なブランド効果
・医師免許が生活のリスクヘッジになる
・医学知識の汎用性

が挙げられると思います。一般に医師として一人前になるには卒後10年(最短34歳)はかかると言われるけれども、医師を名乗れるのは最短24歳だし、研修後の26歳からは週に半日の診療アルバイトでも生計を立てられるようになります。こんなに効率よく自己ブランディングを行え、経済的破綻リスクを気にせず好きなことに挑戦できる肩書は他にないです。

「医師+〇〇」の肩書では、例えば精神科医の場合ですと、理由として①患者の急変が少なくて負担が比較的軽い(→二足目の草鞋を履きやすい)、②人の心に関係する仕事を二足目の草鞋にしやすい(=そういう仕事はたくさんある)、などがよく聞きます。実際は週一日程度で医者を続けても一人前の医者になれるわけないですが、一般の人はそんなことは知らないですし、気にされません。


個人的には、「医者にしかなれないのが医学部のデメリット」と考えている医学生は、むしろ、次に挙げる本当のデメリットを自分で反映しているのではと思います。

1つ目:「視野が狭い(=他の学部を知らない)」
2つ目:「主体的に動けない(=決められたキャリアから動けない)」

以下、順に書いてみます。


世界が狭く、視野が狭くなる危険

医学生は、他の学部の人と関わる機会が少ないです。サークルや部活も医学部内で完結しており、医学部だけキャンパスが離れている総合大学も多いです。医学部に入ると、自分から行動しない限り、外部の人と仲良くなってキャリアや人生観を聞いてみたり、医学以外を広く学ぶ機会に遭遇しにくそうです。

また、そもそも医学部では講義や実習の量が多く、それに専念する時間が長くなりがちです。ますます医学以外を知らない、医師以外のキャリアを知らない人が育成されそうで、これはよろしくない状況だと私は感じます。もう少し、余裕がある時期があってもいいような気はします。



主体的に動かなくても上手くいく

また勉強量が多いだけでなく、その中身も暗記ばかりで頭を使うことを要求しないので、これも結構問題だと思います。基本的に全科目が必修で、学期ごとに試験orレポートをクリアしていくのが医学生のミッション。勝手に講義がセッティングされているので、主体的に学ぶ必要も特にありません。他学部のやり方に比べて、高校のやり方と近いです。(勉強は理系でも文系でもなく、「暗記」です。)

さらに、ただでさえ勉強が暗記ばかりなのに、他の理系大学のように「卒業研究」がなく、大学院に進学して「自分で課題を設定して研究に取り組む」訓練を若いうちに経験できません。こんな教育を受けるので、周知のように、医学部は職業訓練校であって、大学ではないです。


医師になればマニュアルに従うことが一番だから、主体性を抑えるような教育も合理的なのかもしれませんが、地頭の良い若い学生の芽を潰しているように思えなくもないです。本当に優秀な人は自分で行動を起こせるから良いということかもしれませんけれど。。。

医学部に入ると、キャリアの選択を迫られるタイミングも少なくて、レールに乗せられている感があります。医学部以外では、入学3年目に卒研の研究室を決めて、進学する大学院&研究室を選び、就活では会社を決めて自分で行動、という風に選択がありますが、それと比べると医学部では選択のステップが少なそうです。

まとめ:
・世界が狭くなりがち。勉強が多くて大変。余裕なくなりがち。
・典型的な詰め込み教育。レールがあるから選択の必要に迫られない。

医学部での勉強についての詳しい特徴は、こちらのページに書きました。ぜひご覧ください。