博士取得後の給料(企業・大学)

博士取得後の平均年収ってどのくらいでしょうか。

この記事では、アカデミアポストの年収を民間会社と比較してみます。年齢は30歳前後を想定し、技能は一般的な分子生物学実験・研究・課題発見と解決力・英語力、と考えます。無理やり一般化してみるので、会社や大学によって大きく異なると思いますが、傾向は間違いなく存在します。(具体的に知りたい方は、転職サイトなどに登録してみるのがお勧めです)。


(1)年収700万以上

<大手コンサルティング会社、大手・準大手製薬会社>
まず、高給を得たいなら、もし行けるならですがコンサルとか大手製薬に行った方がいいということです。ただ、特に製薬研究職は今ではかなり狭き門です。大手なら並みの国立大よりもずっと良い研究環境・優秀な人材が集まっています。会社の規模が大企業になればなるほど、30歳手前の新卒博士にも寛容です。もちろん当人の技術・研究能力が見合っていればですが、「社会人経験」のようなものは大手の製薬企業であれば特に求めていません。

コンサルに就職する博士は、私の個人的な印象では、ガツガツ系の人が多い傾向がありそうですす。研究能力や取得技術自体よりも、それを如何に素晴らしく説明できるかが重要なのかもしれません。会社に専門家はいませんから当然なのですが、結果的に本人の研究力と比べてハッタリが上手い人が多く就職できていた感じがします。ただ就職後はものすごく多忙であると聞きます。


(2)年収500万から700万

<中堅製薬会社、優良一般企業、正規の助教、トップクラスのポスドク>
中堅の製薬会社になると、少し大手よりも待遇が下がりますが、それでも並みの上場企業よりずっと上です。日本の中堅製薬会社となると、ほとんど薬をつくれていないところも多いので、博士は行きたがらないでしょうが、会社側も、よほど専門性がマッチしない限り歓迎されません。バイオ系の博士が就職できそうな会社では、試薬メーカーや医療機器メーカーも30歳でこのレベルの年収のところが多いと思います。

アカデミアでも、もしも早めに助教になれたら収入の面では民間企業に劣っていないです。ポスドクで高い給料の場合(学振PDなど)も、平均的な民間企業と比べて年収だけ見たら恵まれていると言えます。

ポスドクでトップ(PD,SPD)で戦うのは難しいなら、地方私立大学で助教として働くことも推奨したいです。研究よりも大学雑務や教育がメインの仕事になる場合が多いですが、任期が長いor任期なしの場合も多く、国公立大学と比べて年収が高い場合が多いです。


(3)年収400万から500万

<高待遇のバイオベンチャー研究職、優良な企業一般、低待遇の特任助教、高待遇のポスドク>
高年収とは言えませんが、世間的には低年収でもないです。贅沢しなければ普通に生活できるし、男性なら結婚できる年収に入ります。一般企業の正社員と異なり、バイオベンチャーの場合は将来不透明なのでアカデミアポスト任期ありの場合と精神的にはあまり変わらない気もします。特任助教やポスドクなら1年ごとの契約更新が普通なので、将来への不安感が強いかもしれません。


(4)年収300万から400万

<バイオベンチャー研究職、普通のポスドク>
このレベルになると、博士までの奨学金返済が負担になりそうです。旧帝などでトップクラスの研究を行い、業績をしっかり持っているなら許容できるかもしれません。一応、一人分の生活費は楽にまかなえるので、研究が楽しくて、将来への自信もあればやっていけそうです。


(5)年収300万円以下

<低待遇のポスドク、バイオベンチャー研究職、派遣実験員>
これはきついと思います。ポスドクなら待遇改善を教授に訴えていいです(例:「奨学金が返せません」と言う)。旧帝大卒などで学歴があるなら大幅なキャリアチェンジを図ってもいいと思います。「衣食足りて礼節を知る」です。最低限の余裕がなければ研究は楽しめませんし、斬新なアイデアも出ないと思います。


ポスドク問題とは
ポスドクの場合は待遇の幅があまりに広いのでハイリスクハイリターンのようにも見えます。底辺ポスドクだと派遣のテクニシャンと同様レベルです。一方で学振PDとかSPDのような制度もあり、場合によっては、研究費に恵まれたラボで高待遇で雇われることもあります。全体としては、一部に勝ち組ポスドクがいる一方、高卒派遣社員のテクレベルから脱せられないポスドクがたくさんいて、そんな彼らは高学歴ワーキングプア状態です。

また、アカデミアでは雇用に任期が存在することが精神的な負担になります。ずるずるポスドクを続けていると、40歳になって職の幅が狭まりますし、最終的には無職さえもあり得ます。日本は年功序列が重要なので高齢ポスドクの採用はかなり避けられますし、民間会社でも、高齢の未経験者採用は(警備員などを除き)あまりないです。長期のポスドクは高リスクと言えると思います。

関連記事:
ポスドク問題・特任助教問題とは
博士、ポスドクと任期付き助教の末路

給料アップには転職サイト:
転職なら【リクルートエージェント】(相場がわかるので登録はお勧めです)


17.3.19追記:民間企業だと退職金がもらえる場合が多いので、上記額面より多いと解釈できそうです(一方、大学での雇用形態は「年俸制」が多く、この場合は退職金やボーナス等すべて含めた額から換算された給与が毎月支払われます)。