理系の錯覚資産とは? 作り方・増やし方・使い方

最近流行した本で、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ふろむだ)という書籍があります。

 

内容を要約すると、人を評価するときに「1つのプラス属性に引っ張られて、他の属性を過大評価してしまう」という現象(ハロー効果)について書かれた本で、この時のプラス属性を資産と考え、「錯覚資産」と呼んでいます

本の内容は別に深くないのですが、私の経験にも一致して共感するところがあるので、今回ネタにします。就職前の学生など若い方には参考になるかもしれません。よかったら読んでみてください。



錯覚資産の具体例(理系)

私の周りの分かりやすい例として、「医学博士(医師ではない)」の多くの学生が新卒で有名コンサルティング会社に就職したことを思い出します。この例では「医学博士」という肩書が名刺にあることによって、「この人すごそう。賢そう」と思われるから、クライアントから信頼されやすいのがメリットになるようです。

しかし現状は、「医学博士」を取得するための大学院入試は非常に簡単で(=通称学歴ロンダリング)、入学後も教授に言われた実験を忠実に行っていたら「医学博士」は簡単に取れたりするので、あまり当人の能力は関係ありません。「医学博士」は本人の能力を反映しない肩書なのに、本人が魅力的に映ってしまうので、「錯覚資産」として機能しているといえます。

他に、理系のキャリアの中では以下の2要素も錯覚資産になりえると思います。

(1) 有名研究室の出身であること
有名研究室の出身者は民間企業・大学への就活で有利になります。実際は、研究室に入る時に試験はないし、研究室での成果も教授の力による場合が多いから、本人たちの能力は何も反映しないです。ただし、本人の能力自体よりも、(本人を介した)有名教授とのコネクションを目当てに有名研究室の学生が企業に採用されることも多く、この場合は「錯覚」資産とは少し意味が異なってきます。

(2) プレゼンが上手(イケメン高身長や美人有利)
研究キャリアでは、若いうちの学会は「就活の場」です。自分が優秀で「研究者として仕事ができる」ことを他大学の先生たちにアピールすることが大事だったりします。

正直私はプレゼン力が研究力と関係するとあまり思いませんが、「プレゼン重視」の風潮は確かにあります。プレゼンでは、高身長は自信や頼れる印象を相手に与え、美男美女はそれだけで見るものをいい気分にさせるから得です。印象がよくなれば、仕事の能力も連動して高いと錯覚されるから就活でも有利。若い教員ならこのレベルのハロー効果で教員に就いてる人も結構います。


錯覚資産は使い方が肝要

錯覚資産を利用する際の注意点としては、本来の仕事で平均的な実力はないと、上司や雇用主をがっかりさせてしまうことだと思います。ただし、研究キャリアの場合も他の仕事と同様で、上司(教授)はより仕事(研究)ができると自分が思っている部下(若手研究者・学生)に、よりいい仕事(研究テーマ)を与えるので、やはりキャリアの初期段階で錯覚資産を持つ人は長期的にも有利になりやすいです。

錯覚資産でライバルに出し抜かれている人は、(1)錯覚資産を相手にアピール、するとともに、(2)錯覚負債を相手に見せない、という注意も必要だと思います。ポイントは、あくまで相対的な自分のレベルを考えて強みを積極的にアピール(弱みを隠す)だと思います。

例えば、「プレゼンは下手だけど英語はできる」人は、日本語でプレゼンする学会ではなくて英語が指定言語になっている学会を選んだほうがいいです。そしてこの場合は「英語」が錯覚資産です。英語が他の人よりもうまければ、プレゼンなどで口下手でも悪印象を相殺してくれるし、しかも英語スキルは汎用性があるのでお勧めです。錯覚資産を作るなら、「わかりやすさ」や「汎用性」がキーワードになると思います。

私なりの注意点としては、どちらかというと「弱みを最初に見せない」方が肝心だということです。キャリア形成に限った話ではなく、例えば、口下手の陰キャが出会いを求めて飲み会に参加しても意味ない(逆効果)、というのと同じだと思います。

キャリアでも、自分が活躍できる場所を選ぶのが吉だと思います。