実験が遅い人(ダメな例)

このページは、研究をはじめて間もない学生(大学院生)向けの記事です。

効率がすべて。

若い研究者が研究に取り組める時間は1日あたり、

1日(24時間)
-睡眠(5~8時間)
-各種必須の時間(3~4時間)
=12~16時間

くらいだと思います。

実際のところ真面目に働いているポスドクとそうでないポスドクで差がとても大きいですが、大学での研究ポストがポスドク数よりも圧倒的に少ないので、もし将来的に研究者を目指すのであれば、若いときに、比較的働いている部類である1日13~15時間くらいを目安に研究にとりくみ、その限られた時間を効率的に過ごすことが大事になってきます。

また、年齢とともに体力が低下することや、結婚したりして自分以外のために時間を割く必要が出てくることを考えても、いかに働く時間を効率的に過ごすかが長い目でみて大事になってくると思います。研究を始めた学生のときに、効率的に動くことを行動パターンとして刷り込まなければ、将来にわたって大きな損失を被るでしょう。

私が周りを見る限り、成果を出せないポスドクや助教は、単に頭がよくない、動きが遅いという以外に、行動パターンに問題があるのが目立ちます。私の同室の助教は問題のある助教の良い例であり、2年間かけてやっとFigure 1a相当のデータしか出せていません。(こんなペースだと任期更新されません…)。以下は反面教師にすべき彼の観察結果でもあります。。


ダメな例1:ハイリスクな研究に100%を注ぐ

若手はこれをやらないほうがいいです。ノックアウトマウス作成のように「有意差がでなければ論文にならない」「労働力と時間がかかる」作業に全力を注いではいけません。リスクをきっちり分散してください。コンスタントにデータを得られ、1-2年で論文を見越せる研究を進めなければなりません。1-2年単位でデータを貯めなければ、その間に研究費申請も難しいですし、新ネタがなければ学会発表もやりにくい、他者からの評価もだんだん下がってきます。

自分でリスク判断して研究を進める能力は博士課程までに身に着けるべきです。その時期に指導教官から言われたことをやっていただけの人は往々にして、ポスドクになっても研究プロジェクトのリスク判断をできていません。学生のあいだは指導教官が、当人の研究の成功に対してある程度の責任を負っている(=学生に学位取得させて、教授としていかにも教育の責任を果たしたように見せかける動機がある)ので、それなりの面倒を見てもらえるでしょうが、ポスドク以上になると理論的にはプロの研究者ですから基本的には当人がリスク判断し、教授と議論・説得等しながら仕事を進めないといけません。

ダメな例2:DNAワークに全力をかける

例外もあるでしょうが、基本的にプラスミド作成などのDNAワークは一般的な分子生物学のラボでは実験準備にすぎません。バッファー作成(試薬の準備)などと本質は同じなので、決して「実験をやった気」になってはいけません。データを取れなければその段階では実験としての価値はないので、基本的には「結果が出る他の実験と同時並行」すべきです。

また、DNAワークは「(普通プラスミド完成という)結果がすべて」なのでいかにしてそれを効率よく達成するかが重要です。当たりのコロニーを1つピックアップすればいいのですから、例えば3つ以上も当たりのコロニーが取れたら「実験に無駄があった」と反省しなくてはいけません。ここで「実験が上手く行った!たくさん当たりのコロニーを拾えた!」と喜んでいては絶対にいけません。喜んでいる人は割とたくさん存在するのですが、そういう人はあまり研究に向いていないと思います。


ほしいプラスミドを作るという結果がすべてですから、マニュアル的な正しさよりも作業の効率化を選ぶのも問題ありません。以下は、仕事の遅い職場のダメ助教の行動パターン例です。

  • 例1:大腸菌トランスフォーム直後、アンピシリン(Amp)耐性遺伝子の発現を待つためにAmpフリー培地での振盪培養する。これはチューブと時間と労働力の無駄です。(抗生物質の作用機序を考えれば)基本的に直接Amp+プレートに撒いてよろしい。
  • 例2:LB培地作成時、水に加えたLBの粉はスターラーを用いて溶かしてからオートクレーブかける、そんな必要はありません。粉は直接ビンに入れてさっさオートクレーブかければよろしい。

一般に、日々PDCAを回せない人は成長しないと思います。

分子生物学の研究は実験量を要求するから、手を動かしているだけで研究している気分になりがちかもしれません。それではダメなんです。いかに少ない労働量で効率よく意味のあるデータを得るかを常に考え、改善していかなくてはいけません。自身の行動を反省し、改善していけない人に成長はありません。

がんばりましょう。。