生理学の対策2
生理学のカテゴリでは、ホルモンの他、このページ記載の「腎臓」や「各栄養素の吸収」も頻出です。肺や心臓が関係する循環系も大事ですが、やや問題を作成しにくいような感じもします。ただ、概念としてはイラストを描くなどして覚えたおいた方がよいでしょう。
目次
呼吸を構造的に説明する
換気のメカニズム
胸郭は骨と筋肉(肋間筋、横隔膜)に囲まれ、肺を含む空間である。吸気時には横隔膜が低下して胸郭が拡張する。これにより胸腔内圧が陰圧になり、肺が拡張する。それに伴って外気が吸入される。
memo:
胸郭の下部の横隔膜が低下することで何が起こるかを想起すればよい。
なお、呼吸中枢の活動に影響を与えるのは血液の二酸化炭素分圧と酸素分圧である。延髄表面の化学受容器で検出される。
心臓の電気的活動を構造的に説明する
心筋は同調して収縮・弛緩しなければならないため、心筋細胞はギャップ結合で連絡され、一体化している。心臓の収縮は、右心房に存在する洞房結節が周期的に興奮することで始まる(このため洞房結節はペースメーカーと呼ばれる)。洞房結節の興奮は心房内を伝導し、房室結節 → His束 → Purkinje線維の順番で伝わる。これに対応して、心房収縮 → 心室収縮、が順序正しく起こることになる。
memo:
心電図では、心房の脱分極を表すのがP波、心室の脱分極を表すのがQRS波、心室の再分極を示すのがT波、である。
内分泌器官としての心臓を説明する
主な心臓ホルモンとして、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などがある。ともに血圧下降と利尿作用。心不全時にANP, BNPの分泌は亢進し、心臓の負担が軽減される。
memo:
重症の心不全ではBNPの血中濃度が高いらしい。
Starlingの法則
心筋は収縮前の長さが長いほど収縮力が強くなる。この法則をStarlingの法則とよぶ。
memo:
心筋を養う動脈が冠動脈である。大動脈をすぐに分岐して心筋に血液を送る。冠血流は心臓の拡張期に主に流れる。
momo:
門脈以外の静脈は弁を持っており、逆流が防がれている。運動時は、筋肉の収縮に伴い周囲の静脈が圧迫され、静脈血の右房への還流は促進される。
pH調節の観点から呼吸器と腎の役割を述べよ。
生体における代謝では常に酸性物質が産生されている(この言及は重要)。二酸化炭素、ケトン体、リン酸、硫酸などが含まれる。肺は二酸化炭素を呼出する。腎臓は、アルカリである炭酸水素イオンを再吸収し、プロトンを尿に分泌することで、体液が酸性に傾くのを防いでいる。
memo:
腎臓の役割:
・尿素などの老廃物の排出
・原尿からイオンを再吸収したり、尿中にイオンを分泌することで体液の恒常性維持
・エリスロポエチン産生により赤血球産生を調節(参考:ネスプ)
・ビタミンDを活性化することでカルシウム代謝に関与
・レニンを分泌することで循環の調節に関与(重要リンク)
・HCO3-(炭酸水素イオン/アルカリ性)の再吸収とH+の排泄による酸塩基平衡の維持
尿の濃縮と希釈のメカニズム
尿細管の水の透過性を調節することで、尿を濃縮と希釈が行われる。特に、抗利尿ホルモン(ADH, バソプレシン←下垂体後葉)は高張尿(浸透圧が高い /粒子が多い、濃縮された尿)の生成に重要。
凝固と線溶を詳しく説明する
血管が損傷を受けると、血小板が遊走して損傷部位に粘着する。血小板はコラーゲン(血管内皮下に存在)に対するレセプターを持つ。血小板はサイトカインや増殖因子を分泌して血小板や線維芽細胞を呼び集め、血小板同士が凝集して損傷部位をふさぐ(これを1次止血と呼ぶ)。正常状態では血管内皮細胞がプロスタサイクリン(プロスタグランジン1)を分泌して血小板の凝集を防いでおり、1次血栓が形成されない。
1次血栓は力学的に弱いため、さらにフィブリンが析出してこれを補強する。カルシウム依存性の反応である。トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変える反応を触媒する。
線溶は、フィブリンがブラスミン(plasmin)により分解される反応である。
主要な栄養素(糖質・中性脂肪・タンパク質)の消化と吸収
多糖
多糖(実質デンプン)は唾液アミラーゼと小腸で膵液のアミラーゼによりマルトースまで分解される。マルトースは小腸刷子縁(さっしえん)膜に存在するマルターゼによりグルコースまで分解される。小腸で、Na+と共役した共輸送(二次能動輸送)で取り込まれる(場合によりグルコーストランスポーターによる受動輸送)。
中性脂肪
膵液のリパーゼの作用でグリセロールと脂肪酸にまで分解され、小腸で吸収される。細胞内で中性脂肪に再合成され、エキソサイトーシスされる。リンパ管を通ってキミクロンは胸管に集められ、血中に送られる。
*脂肪は、胆汁酸の効果によりミセルとなっている。
タンパク質
最初に胃のペプシンで分解される。ペプシンはペプシノーゲンの形で分泌され、低pHで活性化する。ポリペプチドは十二指腸で、膵液中のトリプシン・キモトリプシン・エラスターゼによりさらに小さく分解され、カルボキシペプチダーゼなどでアミノ酸からトリペプチドにまで分解され、小腸に吸収される。小腸上皮細胞内ではトリペプチドはアミノ酸まで分解される。
胃液の分泌について説明する
胃の壁の細胞が、プロトンポンプによってプロトンを内腔に分泌する。脳相では副交感神経(迷走神経)の刺激がアセチルコリンで胃を刺激することが胃酸分泌を促進する。また、タンパク質が胃に入り胃粘膜のG細胞を刺激すると、G細胞がガストリンを血液中に分泌し、これを受容した壁細胞は胃酸を分泌する。胃粘膜のECL細胞はアセチルコリンやガストリンで刺激を受けると、ヒスタミンを分泌する。これが壁細胞を(H2受容体を)刺激して胃酸分泌を促進する。
*腸液や膵液でも同様の経路が存在するので余裕があれば覚える(煩雑な場合はスルーでよいと記されており、無理する必要は全くなさそう)。
肝臓の働き
・脂質代謝
・アミノ酸の異化
・グリコーゲンの貯蔵
・血漿タンパク質の合成
・アンモニアから尿素の合成
・胆汁の生成
・薬物や毒物の代謝
・代謝に伴う熱産生
トリグリセリドの運搬様式を説明する
肝臓で合成されたトリグリセリドはリポタンパク質と結合しVLDLを形成してけちゅを運搬される。食事由来におトリグリセリドはキミクロンに合成されて血中に運ばれる。いずれの場合も血中のリポタンパク質リパーゼによって加水分解されて脂肪酸を遊離し、遊離脂肪酸は抹消組織でエネルギー源となる。
*この問題は盲点であると思われた。注意して覚えよう。
この問題は頻出らしい↓
副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド)を例にとり、ホルモンのフィードバック機構を説明せよ
*ステロイドの場合は自らが転写レベルでフィードバックかけられる点でペプチドと異なる。
・コルチゾール分泌が亢進した場合、視床下部・下垂体前葉でコルチゾールと受容体の複合体がCRH(corticotropin-releasing hormone), ACTH(adrenocorticotropic hormone)の転写を抑制する。
*CRH(視床下部から放出) → ACTH (下垂体前葉から分泌) –> コルチゾール(副腎)
*ビタミンについては、要項集(p267)によると、「ほとんど出ないとは思うが念のため」対策していた方がいいかもしれないようだ。脂質の(全身における)代謝は要対策であるので基本的なところは覚えること。
①【大人の医学部受験】元医学部教員の医学生が「学士編入」をゼロから詳しく解説
→ 医学部編入に必要な情報を網羅しています。
②医学生向け研究の始め方・取り組み方ガイド(医学生・学士編入志望者に有用)
③私が大学教員を辞めて医学生になった経緯(研究関係者・学士編入志望者に有用)
<ホルモン以降は、No.3につづく>