神経科学の対策

脳や神経は頻出分野のひとつ。神経は活動電位の定番問題をいくつか覚えておきましょう。脳は解剖学に入り込むと半端なく大変になりますが、そこまでは不要だと思います。基本的なホルモンは覚え、概念として把握できるところは把握すべし。感覚器のしくみも、(優先度は高くないと思いますが)ある程度知っておくほうが無難。

下記の場所・位置関係を記憶すべし:
・頭蓋骨>硬膜>クモ膜>クモ膜下腔(髄液があり、血管が走る)>軟膜
・長さ2mmの神経管が胎内で脳へと変化。神経管内部の空間は脳室となる。
・ニューロンは多数の樹状突起と1本の軸索を持つ。細胞体が密集したところが灰白質(大脳皮質など)。
・連合野・感覚野・運動野
・大脳、間脳(視床下部、視床、視床上部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳の4種類の領域に分類される
・扁桃体と海馬。扁桃体は情動に関わる。
・大脳辺縁系(海馬・扁桃体を含む)、嗅脳は系統発生的に古い皮質であり、大脳の内部・下部に位置する。大脳辺縁系に(機能的に関連があるということで)視床下部を含めたりするらしいが、ややこしい。文献によって範囲が異なるらしく、海馬・扁桃体だけとりあえず覚えておけばいいと思われた。(大脳辺縁系が大脳に含まれる?のか不明。どうも別ものの分類と考えた方がよさそう)
・呼吸、血液循環、体温の調節などの生命活動の中枢が脳幹。


☆静止膜電位と、活動電位の過程をイオンに言及して説明せよ(要対策)

・静止状態ではNa+チャネルは閉じ、K+チャネルはある程度開いているため比較的自由に細胞膜内外を移動する。細胞内のK+濃度が高く、細胞内はマイナス荷電の状態で平衡が維持されている。
・刺激に対応して、K+チャネルが閉じ、Na+チャネルが開くことでNa+が流入する。これにより細胞が脱分極するが、逆にNa+チャネルが閉じてK+チャネルが開くことにより再分極が誘導される。そもそものNa+とK+勾配をつくっているのはNa/K-ATPaseポンプであり、これは能動輸送による。
・なお、シナプス小胞のエンドサイトーシスはCa2+の流入が誘導する。

☆シナプスを伝わる信号(EPSPとIPSP)を説明せよ(重要問題だから)

シナプス前細胞から神経伝達物質が分泌され、シナプス後細胞を脱分極性に働くのが興奮性シナプス後電位、その逆が抑制性シナプス後電位である(シナプスの種類によってどちらかである)。これらの総和により、細胞の興奮性が決まる。このときEPSPについては空間的、時間的な「加重」が発生し、それらの総和が閾値に達すれば活動電位となる

抑制性のシナプスの構成パターンとしては2通りあり、シナプス前抑制とシナプス後抑制がある。前者は興奮性シナプス前ニューロンを抑制し、後者は直接シナプス後ニューロンに接続するものである。
・従って、化学シナプスにはEPSPを起こすもの、IPSPを起こすもの、シナプス前抑制を起こすもの、の3通りがあると解することもできるようだ。

神経伝達物質について説明せよ

モノアミン類(カテコールアミン含む)・アミノ酸・アセチルコリン・ペプチドの4つに分けられる。
モノアミン類
カテコールアミンであるドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンが代表的。これらはチロシンから合成される。カテコールアミン作動性ニューロンは気分や運動、自律神経系の調整に関わる。ドパミンは報酬系に関わる。アドレナリンは脳以外にも、副腎髄質から放出される。
他に、セロトニン、ヒスタミンもモノアミン類であり、それぞれトリプトファン、ヒスチジンから合成される。セロトニン作動性ニューロンは気分や情動に関与し、うつ病との関連が指摘されている。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はうつ病の治療で用いられる。

アミノ酸
興奮性シナプス伝達を起こすグルタミン酸は、イオンチャネル型受容体であるAMPA, NMDA, 代謝調節型(GPCR)のmGlu受容体などに受容される。抑制系の伝達物質であるGABAはイオンチャネル型または代謝調節型(GPCR型)の受容体に受容される。GABAの前駆体はグルタミン酸である。GABAはγ-アミノ酪酸(γのCにアミノ基がついた酪酸)で、血液脳関門を通過しない。

アセチルコリン
アセチルコリンは脊髄や脳幹などの運動ニューロンで産生される。筋肉に向かうニューロンはすべてコリン作動性ニューロンである。

グリア細胞についてそれぞれ説明せよ(アストロサイトを忘れそう。注意)

脳内のグリア細胞は3種類あり、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト、である。
アストロサイトはニューロン周囲の環境を整える。例えばシナプスを包むように存在し、神経伝達物質がシナプス間隙外に拡散しないように防いでいる。アストロサイトは神経伝達物質を受け取る受容体を持ち、情報伝達に能動的に関与する可能性も示唆されている。
・オリゴデンドロサイトは軸索の周囲を髄鞘(ミエリン鞘)で覆う。末梢のシュワン細胞と異なり、1細胞で複数の軸索膜を覆う。
・ミクログリアは損傷したり、炎症を起こしたニューロンなどを貪食して処理する。

☆小脳記憶と長期抑圧(LTD, long term depression)について、長期増強と併せて説明せよ

・小脳皮質にあるプルキンエ細胞(大きいニューロンでGABA作動性の抑制性ニューロン。入力がないときでも自発的に連続発火しているらしい)が重要。
・小脳の長期抑圧は平行線維とプルキンエ細胞間のシナプスの伝達効率が長期(小脳切片の場合でも最低数十分以上)に渡って低下する現象。平行線維と、もう一つの興奮性入力である登上線維が同時に刺激されることで引き起こされる。登上線維は、意図した運動とのずれを末梢からフィードバックしており同時に刺激された並行線維とプルキンエ細胞とのシナプスを抑制することで、運動の学習に関与していると考えられている。(イラストで単純化された位置関係を覚えること!)
・なお、長期抑圧は海馬など他の部位にもみられる。海馬では海馬依存の記憶と行動の柔軟性に関与していると考えられている。身体で覚えた記憶(小脳での長期抑圧)がなぜ時間が経っても忘れられない記憶なのかは未解明であるようだ。
・Link: 長期抑圧(脳科学時点のページ)2003年の理研のプレス
・長期増強 (LTP) とは、化学シナプスが高頻度に刺激された後に起きるシナプス結合強度の持続的増加である。 海馬のほかニューロンに広くみられる。記憶と学習の基盤と考えられている。加重された脱分極の刺激が十分に強いときに引き起こされる。前期の増強は、(タンパク質合成非依存で)AMPA 型グルタミン酸受容体の活動性や膜上の数を増加させることにより引き起こされる。次いで、タンパク質合成依存によりシナプスの伝達効率が高まる。(*「局所の」タンパク質合成に依存であるか否かでよくわからないようだ。細胞全体の場合に比べ、局所である方がシナプス単位での調節を理解する上ではわかりやすいらしいが。。その他に、シナプス前細胞について等、いくつかの仮説があるようだ。)
・シナプスの可塑性、を問われた際も上記のような内容を答えればよい。

中枢、および末梢神経を分類して説明せよ

中枢神経系は脳と脊髄からなる。末梢神経系は中枢神経系以外を指し、体性神経と自律神経に機能的に分類される。体性神経は意識下での運動と感覚を担っており、感覚神経と運動神経がある。自律神経は無意識下での内蔵の動きを司り、交感神経と副交感神経がある。交感神経はストレス下などで体内を興奮・緊張自体にして消化管の機能は抑制する。副交感神経は交感神経系に拮抗する働きがある。
・交感神経はアドレナリン作動性で身体活動を活性化させる。副交感神経はコリン作動性で、身体を安静にする役割を担う。交感神経幹が脊椎の両側に位置しており、臓器に興奮を伝える。

交感神経と副交感神経の二重拮抗支配について説明せよ

上述の内容を答える。

反射について説明せよ

反射運動は、脊髄や脳幹が指示するパターン化された運動である。大脳を経由せず無意識になされる。伸張反射は脊髄が司る。前庭動眼反射(目が頭部と逆に動く)は脳幹が司る反射運動である。

☆体温調節について説明せよ

・恒温動物は体温を一定に保つ機構があり、間脳の視床下部がその中枢である。
・寒冷環境では、①骨格筋の運動(体性神経を介する)によるふるえや、②褐色脂肪組織での代謝性熱産生が起こる。褐色脂肪組織は新生児や冬眠動物に多い。ノルアドレナリンにより、脂肪が分解されて熱が産生される。
・また、ノルアドレナリン(交感神経系)の作用により、③熱放散を抑えるために皮膚血管は収縮する。④毛が多い動物では毛を立たせることで皮膚表面の空気の層を厚くする(ヒトの鳥肌)。(*血管へのアドレナリン、ノルアドレナリンの作用は場所や濃度により異なるようでややこしい。。)
・脳科学事典の記事はわかりやすい。

神経管について説明せよ