ラボの財力と実験技術

大学院生や若手研究者が身に着けるべきものとして、「実験技術」が挙げられます。この記事では「実験技術」と「ラボの財力」の関係を話題にしてみます。


基本的に研究室はお金持ちの方が良いのですが、あまりに金持ちすぎると、学生が実験技術を身につけられない状況になることもあります。特に日本トップの大御所研究室であれば、潤沢な予算があるのでプラスミド作成も外注デフォだったりします。そうすると大学院生はモレキュラークローニングの基本技術すら身につけられません。

(大御所ほどでないが)まあまあ研究費のある研究室では、「実験を試みて上手く行かなかったもののみを外注する」という方針もあります。医学部の研究室だと大抵お金はあるので、普通そんな感じかもしれません。研究効率としては良いのかもしれませんが、このやり方だと、やはり試行錯誤の経験が少ないので、研究室に蓄積された知識や技術・コツの面で弱くなるような気がします。キット使ってばかりだと、(実験中は)手を動かす実験員って気分になります。

ただ、これはやむを得ないことだと思います。財政的に貧弱な研究室になると、外注できず、キットも買えないから、すべて自分で試薬作成から始めます。これは本来の研究のあり方って感じもしますが、同じ実験を行うのに何倍もの労力を使うことになるから、研究に時間がかかって、アカデミアで勝ち抜くうえで不利になります

程度問題なので判断は難しいですが、例えば、細胞培養液を粉から作製していたり、フイルム現像を暗室で「液に浸して」行っていたら、そのラボは時代を間違っています。30年前はどこもそんな感じで実験してたのかもしれませんが、今そんな研究室は競争に勝てません。

お金がない研究室では、単に研究ペースが遅くなるだけでなく、テクニシャンを雇えないから実験の雑用もスタッフや学生がやります。そうすると研究に割ける時間も減ります。さらに、大学院生はリサーチアシスタントやティーチングアシスタントとして雇われて給料をもらうなんてことはなく、ただ働かせられる可能性大です。大学院修了後もポスドクとして雇ってもらえることを期待できません。デメリットが多すぎます。

お金がないラボに在籍することは、ただそれだけで非常にリスキーなので、選択肢のある若い学生は、とりあえずお金のある研究室に行きましょう。生物学の実験では、キット使ったり外注することが多いから、手に技術が身に付きにくいですが、それもやむを得ないと思います。