助教になれれば安泰なのか?その目安は?

「助教」という立場は、大学教員キャリアの初めのステップという位置づけですが、実際はどんな将来が待っているのでしょうか。

この記事では、元助教の立場から、助教の将来性の考え方に関して短期&長期の観点で書いてみたいと思います。


短期的安定度は任期の長さによる

国公立大学の助教の雇用では、任期付、つまり雇用に期限付の場合が多いです。具体的な年数としては、着任から1年ごとに再任審査される場合からパーマネント(定年退職まで勤務可)の場合まで幅があります。

例外はたくさんありますが、以下のような感じです。

「~助教」の任期の例:
①任期が短い例(特任助教)=1年更新(最大3年)=不安定
②任期が長い例(国立大助教)=5年更新(最大15年)=普通
③任期なしの例(私立大助教)=定年まで勤務=安定

大学倒産などを考えなければ、安泰なのは③「任期なし」のポジションだけですが、②「5年更新」の採用でも安定度はそれなりに高いと認識されるのが普通です。なぜなら5~10年助教として勤めている間に、他大学に転職して、講師や准教授にステップアップするのが大学教員のキャリアでは一般的だからです。

他大学に転職しない場合は、同じ大学で出世して教授になることを目指すわけですが、上手くいく見込みはそんなに高くないと思います。なぜなら、直属の上司である教授が定年退職した後、そこに新しく入るのは外部(通常大学ランク的には上位の)大学の准教授クラスの人であることが多いからです。

大抵、新任教授は着任した大学で新しい研究プロジェクトを始めるので、前任教授の下で働いていた教員は転職活動を始めないといけません。転職成功の見込みが薄い、特に高齢の助教や講師は、「雇い止め不服・更新せよ!」と大学を訴えることがよくあります。「雇い止め」なんて表現を使うと大学側が悪いみたいですが、一般的には、転職できないのは本人の能力不足が原因です。

私は能力不足を自覚したから若いうちに大学教員を辞めたのですが、現在の多くの大学(特に生物系)では、能力不足なのに辞めなかった高齢助教が多く居座っていて、そのため若い研究者のための席がありません。一般的に高齢の助教は、今と違って終身雇用や曖昧な雇用更新条件で採用されているので、能力が低くても居座ることができるのです。


長期的には業績やコネが大事

現在の基準で考えると、私立大学などで任期なしポストに就くことができれば、職の安定度は高いです。助教や講師で私立大学に勤めてしまうと、定年まで昇進しない「万年助教・万年講師」になってしまう確率は高いですが、私立では(教育業務多めだと思うけど)比較的独立的に研究を行うことができるというメリットもあります。

国立大学で助教からステップアップしたい場合は、着任して数年~10年後に他の大学に転職することが当たり前なので、その時期に業績・コネが不足していたら大変です。どちらもなければ無職やワーキングプアに陥ったり、ポスドク逆戻りのリスクも高いです。なので、例えば任期付き助教の将来性を推し量るとしたら、業績やコネ(社交性・共同研究数など)をどれくらい持っているかがカギになると思います。

コネと言うと、単に教授に気に入られるか否かという不平等なものを想像してしまいますが、教授に気に入られるにも最低限の研究能力が必要ですし、共同研究や学会などでつながりをつくる努力は必要です。直属の上司に気に入られるだけでは中長期的に上手くいかないと思います。

まとめ
「任期なし助教」なら安泰だけど、万年助教の可能性も高い。
「任期あり助教」なら業績やコネが長期的なキャリアの安定のために必須。