学位名称の違いについて(生命科学や医科学)

本記事では、「学位名称(≒大学院の名称)の意味」について書いてみたいと思います。対象者は少ないかもしれませんが、良かったら参考にしてみてください(念のため、私個人の意見なので注意してください)。



基本的に名称の重要度は小さい

大前提ですが、大学院に入学するときは「大学院の種類」とか「学位名称」ではなく「研究室で行う研究」を考えて大学院に入学しないといけません。たまにいますが「~大学にあこがれて」なんて言ってはいけません。「~研究室で~の研究を行いたい」、そのための手段として、~大学院に入学するのです。

ただ、ある研究室の研究が分野横断的な研究であるとき、入学できる大学院に選択肢がある場合があります。そういうとき、敢えて選ぶならどちらにすべきか、と迷ってしまうかもしれません。

たとえば、

・特定疾患の生物学的な研究だったら → 医学系研究科 or 生命科学系研究科
・医療工学的な研究だったら → 医学研究科 or 工学研究科
・生命情報の研究(バイオインフォとか)なら → 生命科学系研究科 or 工学研究科

どこ大学院の何専攻に所属するかによって、取得できる学位が「博士(医学)」「博士(医科学)」「博士(生命科学)」などと変わってきます。こういうとき、何を判断材料にすればよいでしょうか。


研究への考え方は少し加味できると思う

基本的な結論を先に言ってしまえば、研究者としての評価は基本的にすべて研究業績に依るので、名刺に付く「博士」が(医学)であろうが(生命科学)であろうが(医科学)であろうがそれほど関係ないです。当人のバックグラウンドを暗示する場合もあると思うので、話のタネにはなるかもしれませんが、その程度です。修士課程ならもっと関係ないと思います。

ただ、私が個人的に少し大切だと思うのは、所属大学院が違えばコミュニケーションする相手も変わってくるということです。たとえば、ある疾患を生物学的なアプローチで研究する場合、「生命科学系の大学院・研究科」あるいは「医科学系の大学院・研究科」という2選択肢があることが多いと思いますが、後者に属したほうが、カリキュラム的に医療系の研究者(ふつう医師)と関わる機会が多いと思います(大学院によって異なるのと思うので確認が必要です)。

なので、たとえば、大学院カリキュラムで研究発表会があったとして、(当然ですが)医学研究科であれば臨床寄りの質問がいっぱい来るのに対し、生命科学研究科であれば基礎生物寄りの質問がいっぱい来ます。どちらのグループにも、互いに対して「質問が的を射ていない」と考える人が一定数存在しますが、私としては、視野を広げるメリットがあるとも言えるのではないかと思います。なので、自分が今後どんな観点で研究したいかを少し考慮に入れるのもありかと思います(*)。

他の注意点としては、修了要件が大学院によって異なるので予め調べる必要があることです。たとえば、論文が出にくい生物系の研究室なのに、大学院の所属が化学系だったら、修了要件に複数の原著論文が求められたりして、不条理に大変になることがあります。


あと、この記事の前提を壊してしまいますが、生物系の研究なら、そもそも大学院に進学するよりも医学部学士編入学を私は勧めます。よかったら、他の関連記事やnote記事を見てみてください。

note記事:
【大人の医学部受験】元医学部教員の医学生が「学士編入」をゼロから詳しく解説する@note


(*)追記1:日本では研究を行う医師(研究医)が減少傾向なのが問題になっていますが、(そもそもその対策として修士課程が設置された面もある)医科学研究科を出た非医師の基礎医学研究者が、「医学」研究を行っている自覚がほとんどなくて、これはこれで問題だと私は思っています。医師と非医師の間に壁があり、基礎と臨床の相互作用が少ないと思うことは多々あります。


追記2:博士課程の場合、「医学」と「医科学」で選択肢がある場合があるかもしれません。これはどっちを選んでも大差ないと思います。私のように博士取得後に医師を目指して医学部に編入するなら、結果的に「博士(医学)」の方が自然だったとも言えるけど、それなら初めから医学科に行って医師になった方がいいです。研究者を目指すなら医学、医科学で大差ないと思います。