免疫学の対策1

免疫学関連の対策は河合塾KALSの「要項集」を一番参考にしました。このページの内容は並みの生物系大学院の対策としては十分すぎる内容になっているので注意してください。基本的なところ、例えば「適応免疫・自然免疫の仕組みと過程」「抗体の多様性が生まれる仕組み」などを記述できるようにすることが先決で、そのレベルに達すればすでにライバルより先んじています。

新しい自然免疫学」の本からもいくつか挙げています。さっと読める本なので時間があれば推奨。もう少ししっかり勉強したい人はブルーバックスで「新しい免疫入門」の方をお勧めします。


ジェンナー・パスツール・コッホ・ベーリングと北里の成果を簡単に説明せよ

ジェンナーは牛痘を利用した予防医療を初めて試した。
パスツールは生命の自然発生説を否定。
コッホは炭疽菌・結核菌・コレラ菌の発見者。コッホの原則とは(1)ある特定の感染症の病気には一定の微生物が見いだされ、(2)それは分離でき、(3)他の動物に感染させると同じ病気を引き起こし(反例多い)、(4)さらにその動物の病巣部から同じ微生物が分離される。
ベーリング・北里はジフテリアに対する血清療法(抗体が作用)
*なお、三種混合ワクチンはジフテリア・破傷風・百日咳に対するもの。

天然痘とワクチンについて

・天然痘は、ヒトにしか感染せず、感染すれば必ず発症するという条件があるゆえに根絶されやすいかったと考えられる。
・ウイルスは細胞内で増殖するからその排除は細胞性免疫が主役になるが、細胞外に放出されたウイルス粒子を中和すると感染力を示さなくなる例も多い。
・ワクチンで根絶された天然痘(small pox)、(根絶目前の)ポリオ、麻疹(はしか、measles、日本では依然蔓延)はウイルス感染症である。

☆サイトカインとは何か説明し、10個くらい挙げて各機能を説明せよ(IL1,2,4,5,12,13,23他)

急性期には、IL-1, IL-6, TNF-alphaなど。
Th1への分化誘導は、IFN-γ, IL-12 (Th1はIFN-γ, IL-2, 12, TNF-αを産生)
(*Th1はCTL、マクロファージの活性化、オプソニン作用の強いIgGの産生誘導)
Th2への分化誘導は、IL-4 (Th2はIL-4, 5, 10,13を産生。IL-4はIgEへのクラススイッチ。IL-4はマスト細胞により産生されるらしい。Th2はB細胞が提示する抗原を認識して活性化する。)
*必ずしも正しくないが、細胞性免疫はTh1, 液性免疫はTh2により増強される、とよく言われる。

「Th2しごと抗体」と覚える。
<ヘルパーに仕事交代>

Th17への分化誘導は、TGF-β, IL-6, IL-1, IL-23,
IL-6 > B細胞の増殖(TNF-αと併せて関節リウマチに関与)

免疫グロブリンの種類と機能を(抗体の一般機能を含めて)説明せよ

5種類あるが、基本構造はH鎖x2, L鎖x2がSS結合で結合したY字型分子である。V領域(H鎖は5種類、L鎖はκとλのみ)と、C領域がある。H鎖はVDJ組換えするが、L鎖を形成する遺伝子にはD断片はない。
・IgMとIgDが細胞表面の受容体として発現し、まずIgMが産生される(IgMはSS結合の5量体)。時間が経つと、IgG, IgA(主に2量体), 場合によりIgEに置き換わる(クラススイッチと呼ばれる)。IgAは気道や消化管の粘膜に分泌される。
・IgMは体細胞超突然変異(somatic hypermutation)を伴うリンパ節での増殖の以前に産生されるため、親和性の点では相対的に弱い。
・クラススイッチはサイトカイン(IL4>IgG1,E, IL5>IgA)により誘導される。
・胎児には血中からIgGが移行して感染から守る。母乳中にIgAが含まれ新生児の消化管を病原体から守る。二量体IgAは粘膜免疫の主役。IgGの次に多い。
なお、Rh抗原で問題になるのは胎盤移行性があるIgGによる。(IgA, IgMは移行性がないのでRh抗原の種類によって問題にならない。)*順番は「MDがいい(MD–>GA–>E)」と覚える。
MBLサイトの抗体説明ページ

・抗体と抗原との結合は、補体系の活性化、オプソニン作用(*)、中和(毒素の不活化)、寄生虫の排除(IgEのFcに好酸球が結合)、などを引き起こす。
*オプソニン作用:抗体のFcを介してマクロファージや好中球が抗原を貪食すること。
*ABO式血液型に対する抗体はIgMのままなのは、糖鎖に対する抗体であり、T細胞が関与しないからクラススイッチされないから、とされる。

補体を説明せよ

補体は血中に存在するタンパク質で、9つの分子(C1-9)が存在、まとめて補体系と呼ぶ。細菌の細胞膜に穴を開ける、自然免疫系の一部として働くほか、抗体のFc部分に結合することによる活性化により、細菌細胞に穴を開けたり、(C1q受容体を持つ)貪食細胞をリクルートすることによるオプソニン化を引き起こす。

敗血症(sepsis)について説明せよ

細菌が血液中に侵入し、その毒素が全身に回った結果、重い炎症症状を引き起こしたもの。ICUでの管理が必要。多臓器不全に至りやすい。TNF-alphaなどの作用で血管が拡張する。血圧低下によるショックが起こり得る。

自然免疫のセンサー分子を説明せよ

TLR, RLR, NLR, CLRの4つが、PPR (pattern recoginition receptor)である。TLR (Toll-like receptor)は細胞膜あるいはエンドソーム膜に存在する。RLR (RIG-like receptor)は細胞質で、RIG-I, MDA5, LGP2がウイルス由来のRNA等を認識する。NLR (NOD-like receptor)も細胞質で、細菌の構成成分や毒素を認識。CLR (C-type lectin receptor)は細菌表面を認識。レクチンは本来はカルシウム依存性に糖鎖に結合するものを意味する。

MHCについて説明せよ

主要組織適合抗原複合体(major histocompatibility complex)の略。MHCクラスIとMHCクラスIIがあり、前者はほとんどすべての有核細胞と血小板に発現し、後者はほぼAPCに限って発現する。ヒトのMHCをHLAと呼ぶ。
*赤血球はMHCを発現しないが、輸血の際はABO式血液型を合わせる必要がある。
・MHCクラスI分子は3種類(の遺伝子座産物)にβ2ミクログロブリンが会合したヘテロダイマーであり、1細胞上に父方母方含め6種類発現する。MHC2クラスII分子はαおよびβ鎖からなるヘテロダイマーで、理論的には12種類発現する。
・MHCクラスII分子上に乗るのは、外因性タンパク質がリソソームで分解されたものであり、一方MHCクラスI分子上に乗るのは内因性タンパク質がユビキチン・プロテアソーム系で分解されてできたペプチドである。例えば、外因性ウイルス由来のペプチドがMHCクラスI分子により提示されることをクロスプレゼンテーションと呼ぶ。

自己免疫疾患を例示して簡単に説明せよ

・I型糖尿病では膵β細胞が破壊される。
・橋本病では甲状腺が破壊される。
・関節リウマチでは関節が破壊される。
・全身性エリテマトーデスでは多様な自己抗体が産生され、免疫複合体が血管に沈着して炎症を引き起こす。とくに腎糸球体に沈着する。
・バセドウ病は甲状腺細胞のTSH受容体に対する抗体が甲状腺ホルモン分泌を促進する。
こちらのページに詳しめに書いた。

アレルギーとアナフィラキシーについて説明し、現治療法を説明せよ

外来性抗原に対する免疫反応が生体に不利な反応を引き起こすことをアレルギー反応という。
・スギ花粉、ハウスダストによるアレルギー、(一部の)気管支喘息でIgEが産生されるのはI型アレルギー。
・I型アレルギーが激烈に起こったものをアナフィラキシーと呼ぶ。ショックを防ぐためにアドレナリン(エピネフリン)が最も有効。
(アナフィラキシーは、組織や血管の透過性亢進し、全身性の浮腫が出現する。それをおさえるためにアドレナリンが投与される。)
・抗ヒスタミン薬、ステロイドなどが使用される。ABC(気道確保、呼吸、循環)の維持が重要。

オプジーボ、ヤーボイ、ハーボニーを説明せよ

・時間があれば関連する(最近の)重要論文は読んだ方がよい。

NK, NKTを説明せよ