ポスドク・助教の将来設計上の注意

この記事では、若手で任期付き状態にある研究者がキャリア設計するために、研究以外で重要な点をいくつか挙げていきたいと思います。

任期なしの正規助教であっても、教授が退官する頃に先行き不透明になることが多いので、該当するところが多いと思います。



教育歴を付けておく

多くの若い研究者は最終的なキャリアの目標として「大学教授」を目指すと思いますが、大学教員の仕事は基本的に「研究と教育」です。

学部から独立した研究所に就職できれば、あまり学生教育に携わる必要はありませんが、そういう職場は全国的にみて例外的です。通常、大学に就職するときに期待されるのは、研究能力というよりは、研究・教育も含めた総合的な能力です。感覚的に言うと、30代半ばから何コマか講義を担当して、教育歴も付けた方がいいように思います。

また世の中のニーズ的にも、研究より教育の方が汎用性があるスキルです。30歳を過ぎると会社では部下を指導しているべき年齢なのに、研究専任のポスドク経験しかない場合、やはりキャリアの選択肢が狭まってしまうと思います。よっぽど研究が上手くいっている人以外、長期のポスドクコースは危険です。


コネクションを広げる

これも「研究だけで勝負しようとするな」という観点なので、上述の「教育歴も付けよ」と似ています。大学教員で、30代が就くような助教採用では、基本的に受け入れ側の教授に認められればいいだけです。なので、博士取得間もない場合は「輝かしい研究業績よりも、最低限の研究遂行能力・教授と上手くやれる能力」の方が大事になってきます。つまり、コネや伝手が大事になってきます。

具体的には、学会は就活の一環だと思って、顔と名前は覚えてもらうように頑張りましょう。例えばポスター会場で名刺を配って、媚びを売って回るということですが、これにはある程度のコミュニケーション能力・ある程度の研究業績が必要になります。どちらか一方が極端ではダメで、どちらも「ある程度」必要になることがポイントだと思います。共同研究(これも就活)でも同様です。



企業ニーズもある程度意識する

3点目はニーズを意識するということです。はじめに挙げた「教育歴をつけよ」と似ていますが、ここで言いたいのは「研究自体の方向性もニーズを考えて計画しよう」ということになります。

アカデミアで就職するときも、(研究能力自体に期待しているというよりは)「実験技術を受け入れ研究室側に持ち込んでほしい」という期待があるとは思います。しかし相対的に言えば民間企業の方が、研究能力自体よりも実験技術や(研究以外の)関連能力を強く期待している感じがします。

ありふれた例ですが、「動物を扱える技術」「プログラミングのスキル」「チームをまとめた経験」「英語での業務経験」などは、それぞれは珍しくないけれども、汎用性があって会社にとっての使い勝手がよいので、採用候補に上がりやすいと思います。


まとめ
「教育歴」「コネクション」「企業ニーズ」を挙げましたが、まとめると「研究(業績)だけに注意を向けず、周辺スキルも意識しよう」ということになります。

なお私の経歴は、博士課程→民間就職中断→地方大学助教→退職して医学部学士編入、という流れです。民間会社には勤めたことがないので、周囲の話や面接で問われた実感を元にして書きました。

最近は医学部関係の記事も書いていますが、助教関連は記事豊富なのでよかったら見ていってください。

研究キャリアの継続に少しでも不安のある方は、私のnote記事(医学部編入)を是非ご覧ください:
→  元医学部教員の医学生が「学士編入」をゼロから詳しく解説する@note