CAR-T関連情報とCD19
2016,3
上リンク先の記事では、Kite Pharma社が小児あるいは若齢の再発・抵抗性ALL(Acute lymphoblastic leukemia)に対する治療医薬品KTE-C19の臨床研究を始めることが報告されています。この研究では、患者の血液から採取されたT細胞に、抗腫瘍活性を持つKTE-C19を導入(=ex vivoでの遺伝子導入)し、それらを再び患者体内に戻すことで、がん細胞(ALL)を攻撃させることを期待するものです。
予想される副作用として、CD19を発現している正常なB細胞をも攻撃される可能性が挙げられています。導入されたCAR-T細胞(KTE-C19発現細胞)は患者体内に持続的に存在し、腫瘍の発生を監視し続ける可能性にも言及されています。
CAR-Tの研究ではJuno社がKite Pharma社とともに先陣を走っており、ビッグファーマでは、Roche、Pfizer、GSK、Novartisなどもこの領域で研究を行っています。
CD19について
CD19はB細胞の発生や分化に関与しているとされ、成熟したB細胞でその発現は低下していると言われています。ある種の白血病細胞では高発現であることが知られており、治療標的として着目されている分子のひとつです。
2014,7 Accelera signs up for piioneering AR-T researchの記事では、前臨床CROであるAcclera社の動向が報告されています。Accelera社はフランスのバイオテクノロジー企業であるCellectis社と協力し、患者自身のT細胞から作成するCAR-T(キメラ抗原レセプターT細胞療法)によるがん治療研究を行う予定です。Cellectis社はB細胞の白血病およびリンパ腫を対象とするUCART19のフェーズI試験を予定していますが、UCART19の標的もCD19をです。
CARについて
CAR(キメラ抗原レセプター)は、人工的に作成された膜タンパク質であり、細胞外側にモノクローナル抗体の抗原認識部位、細胞内側には細胞活性化を誘導するシグナル伝達部位を持っています。基本型で最も典型的なCARは、細胞工学の手法でT細胞に導入され、CAR内部はTCR(T細胞レセプター)複合体の細胞内領域と共通の構造を持ちます。
T細胞は本来、MHC分子に提示された(病原体等由来の)ペプチド断片によって活性化し、免疫応答を惹起するのですが、CAR-TはCARの抗原(Antigen)の特異性に基づき標的と結合し、その標的分子を発現する細胞(例えばがん細胞)に対して免疫応答、すなわち細胞傷害機能を発揮します。