生化学の対策2
このページの内容はとても重要。酵素反応、速度論について理解する必要があります。これらは薬学部の人は詳しいかもしれませんが、他の学部から医学部編入を目指すなら結構時間を割く必要がありそうです。糖やDNA(と塩基)の構造を書けるようにしたほうがよい。アミノ酸も覚えること。
*メインのATP産生経路は400字程度で書く練習を繰り返すこと。かなり頻出です。
目次
水溶性ビタミンについてそれぞれ説明せよ(出ないであろう)
ビタミンとは、微量で生理作用を発揮し、生命活動に必須の栄養素である。通常ヒトの体内で合成できないため食事で摂取する必要がある。
・水溶性ビタミンは、ビタミンB群とビタミンCであり、体内に蓄積しない。
・ビタミンB群は補酵素として働くため、不足はビタミン欠乏症を起こす危険がある。
・ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミン12(コバラミン)、葉酸、ビオチン、ビタミンC
・すべて、体内で活性を受けることで機能する。
・酸化還元反応に関与するのはビタミンB2とナイアシンである。他の水溶性ビタミンも特定の官能基を転移する補酵素として働く。
抗酸化と抗酸化物質について説明せよ
・動植物は酸素呼吸によってエネルギーを得ている一方、酸素は強い酸化力を有しており、生体に毒性を示す。呼吸に使われる酸素の1-2%は活性酸素とよばれる反応性の高い物質に変化する。
・抗酸化物質であるビタミンE、ビタミンC、グルタチオンなどや、抗酸化酵素が酸素や活性酸素の毒性から生体を守っている。
・フリーラジカルは、「不対電子を1つ以上有する分子」のことである。水分子が放射線などのエネルギーで共有結合が切られ、水素のラジカルとヒドロキシラジカル(・OH)が生じる。これらはフリーラジカルである。(*フリーラジカルと活性酸素の範囲は重複もあるが異なるので注意すること。活性酸素は活性化された酸素のことで、スーパーオキシドやヒドロキシラジカルなどはラジカルであるが、過酸化水素やオゾンはラジカルでない活性酸素である。)
・呼吸で取り得られらた酸素の1-2%がスーパーオキシドになる。すなわちミトコンドリアにおける電子伝達系の過程でスーパーオキシドは必ず漏れ出てくる。炎症反応における好中球のNADPHオキシダーゼによってもスーパーオキシドが発生する。(スーパーオキシドは酸素O2が電子を一つ余分に持っているもの)。
・主な抗酸化酵素として:SOD(スーパーオキシドジスムターゼ。スーパーオキシドを酸素と過酸化水素に変える)、カタラーゼ、グルタチオン還元酵素、チオレドキシン還元酵素、ペルオキシレドキシンなどがある。主な抗酸化物質としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、グルタチオン、チオレドキシンなどがある。
例:
グルタチオンは自らのチオール基を用いて過酸化物や活性酸素種を還元して消去する。
糖質とは何か説明せよ
糖は、ヒドロキシル基(-OH)を持つ炭化水素で、カルボニル基としてアルデヒドまたはケトンのいずれかを持つ(即ち2つ以上の-OHを持つ)。ペントースとヘキソースは、カルボニル基とヒドロキシル基との間の縮合で、「ヘミアセタール」または「ヘミケタール」を形成し、99%以上は環状構造をとっている。
*カルボニル基(RRC=O)とカルボキシル基(-COOH)は異なるので注意。例:カルボキシル基はカルボニル基+ヒドロキシル基である。
糖を主な成分とする化合物の総称(炭水化物とは限らない)。
糖はグリコシド結合によって縮合し、二糖、オリゴ糖、多糖をつくる。
主要(ヒトで50-60%)なエネルギー源・糖タンパク質やプロテオグリカンなどの構成要素・核酸の基本単位であるヌクレオチドノ構成成分となる。
・二糖類を3つ組み合わせを覚える。デンプン(アミロース・アミロペクチン)、グリコーゲン、セルロースの構造的特徴を記憶する。
グルコースがエネルギーになる過程を説明せよ
(1) グルコースは解糖系により、2分子のピ ルビン酸と2分子(4-2の収支)のATP、2分子のNADHとなる。
(2a) 嫌気的条件ではピルビン酸は2分子の乳酸、2分子のATPになる。
(2b) 好気的条件ではピルビン酸はミトコンドリアに運ばれ、クエン酸回路>電子伝達系・酸化的リン酸化により、二酸化炭素と水に分解される。
(生理的条件下で乳酸を生じるのは、筋肉や、ミトコンドリアを持たない赤血球。できた乳酸が肝臓でピルビン酸に変換され、糖新生でグルコースを生成するループを「コリ回路」と呼ぶ。糖新生ではATPが-6なので、コリ回路では全体としてATPを4つ消費する。乳酸アシドーシスを防ぐ目的がある)
*
[解糖]
グルコース1 > ATP2、NADH2、ピルビン酸2<好気的条件> ピルビン酸>アセチルCoAに変換 クエン酸回路でNADH3、FADH2x1、GTPx1 <嫌気的条件> |
クエン酸回路を説明せよ
・好気的条件下で、解糖系から生成されたピルビン酸がミトコンドリアのマトリックスに運ばれて、アセチルCoAに変換される。クエン酸回路では、アセチルCoAが水と二酸化炭素に酸化される。この過程で、電子伝達系の基質であるNADHとFADH2がつくられる。(3xNADH, 1xFADH2, 1xGTPが1つのアセチルCoAからできる)3.11と覚える。
*アセチルCoA(CH3-CO-S-CoA)のCH3C=Oの部分が経路を回る。
解糖系とクエン酸回路の、エネルギー産生以外の役割を説明せよ
・解糖系でグルコースはピルビン酸を経てアセチルCoAに変換され、脂肪酸合成に用いられる(特に肝臓で)。
memo:
ピルビン酸>アセチルCoA
↓
オキサロ酢酸
↓
クエン酸 >> 脂肪酸、コレステロール
↓
cis-アコニット酸
↓
イソクエン酸
↓
オキサロコハク酸
↓
α-ケトグルタル酸 >>グルタミン酸>グルタミン酸などのアミノ酸>プリン
↓ <–ここでSH-CoAが経路に入る。 スクシニルCoA >>ポルフィリン、ヘム、クロロフィル
↓ –>SH-CoAは経路から出ていく。
コハク酸
↓
フマル酸
↓
リンゴ酸
↓
オキサロ酢酸 >>アスパラギン酸>>ほかのアミノ酸やピリミジンなど
電子伝達系を説明せよ
電子伝達系とは酸化還元電位の異なる酸化還元物質の集合体である。
クエン酸回路でできたNADH, FADH2が、ミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系でATP産生に用いられる。
解答例:
NADHのHから奪われた電子は、NADHデヒドロゲナーゼ複合体の作用でユビキノンに移され、次いでシトクロムb-c1複合体の作用によってユビキノンからシトクロムに移される。最終的にシトクロム酸化酵素複合体の作用により酸素に電子が移される。これらの電子移動に伴う負のΔGを利用して、NADHのH由来のプロトンはマトリックスから膜間腔に能動輸送される。結果、ミトコンドリア内膜を隔ててプロトンの電気化学的勾配が形成される。
プロトンがマトリックスに移動する際に、移動に伴う負のΔGとATP合成反応が共役されることでF0F1ATPアーゼがATPを合成する。マトリックス内に入ったプロトンは電子とともに酸素に移されて水を生成する。
*呼び方が色々なので注意。
NADH
↓
複合体 I(NADH-ユビキノンレダクターゼ:主要成分がNADHデヒドロゲナーゼ)
↓
↓ ← 複合体 II(コハク酸-ユビキノンレダクターゼ) ← コハク酸
ユビキノン(電子伝達体)
↓
複合体 III(シトクロムb-c1複合体、またはユビキノール-シトクロムcレダクターゼ)
↓
シトクロム c(電子伝達体)
↓
複合体 IV(シトクロムcオキシダーゼ)
↓
O2(最終的な電子受容体)
*ユビキノンはコエンザイムQ10、補酵素Qなどと呼ばれる。「ユビキノール」は還元されたユビキノンのこと。
この順番に、電子は一連の酸化還元反応を通してNADHやユビキノール等の電子供与体から、最終的な電子受容体である酸素分子に移動する。これに伴い、複合体I、複合体III、複合体IVがプロトンポンプ機構ならびにスカラー反応を起こして、プロトンを膜外に能動輸送する。複合体IIは好気呼吸におけるプロトン濃度勾配形成には寄与しないが、電子伝達系の一部である還元型ユビキノンを生じる。
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ATPシンターゼがプロトン勾配を利用して高エネルギー化合物であるATPを産生する。(NADHやFADH2の酸化と共役した反応)
グリコーゲン合成とその利点を説明せよ
・細胞内にグルコースを高濃度で貯蔵すると、浸透圧が高くなるため多くの水分が必要になる。これを防ぐために過剰なグルコースはグリコーゲンとなり貯蔵される。肝臓と筋肉で主に貯蔵され、速やかに動員でき、効率は97%らしい。
・およそ8-10残基ごとにα-1,6結合により枝分かれし、還元末端はグリコゲニンと結合している。
・絶食時は半日-1日内に肝臓のグリコーゲンは消費される。
・脂肪と比較したグリコーゲン貯蔵の特徴には以下の点が挙げられる。
1)脂肪は無酸素下ではエネルギー供給ができない。
2)脂肪酸の酸化はクエン酸経路>電子伝達系>酸化的リン酸化、が必要でATP供給が遅い。
3)脂肪酸は脳では(通常は)エネルギー源にならない。
糖新生を説明せよ
食後4時間以内に肝臓で糖新生による血中へのグルコース供給が始まる。糖原性アミノ酸、乳酸やピルビン酸がグルコースに変換される。絶食状態が続くと糖新生による割合が増していく。
・根本は、解糖系の逆反応が糖新生であるが、解糖系で不可逆な反応部分を迂回している。
・先ず乳酸からピルビン酸が作られ、糖新生される。
ペントースリン酸回路を説明せよ
グルコース6リン酸から始まる代謝過程で、核酸合成に必要なペントース各種およびNADPHを生成。
・NADPHは、脂肪酸合成やステロイド、コレステロールの合成、スーパーオキシドの産生に必須の補酵素である。
・リボースは塩基と結合してヌクレオシドになり、デオキシ化されるとDNAの原料である。
・細胞質での反応である。
・赤血球は(ミトコンドリアを持たないため)NADH供給をペントースリン酸回路に依存している。?
*ペントースリン酸回路は、NADPHと核酸原料の供給回路!
糖質代謝におけるATP生成を量が分かるようにして説明せよ
・解糖系の初期に消費される2分子のATPを差し引いて、グルコース1分子から正味36,または38分子のATPが生成される。(NADHが半透膜性のミトコンドリア内膜を通過してマトリックスに供給される際のシャトル系の違いにより、正味ATP生成量に違いが生まれる。また、他の糖からスタートする場合も値が異なってくる。
・グルコースは解糖系で、正味2xATP と2xNADHが生成。
・2xピルビン酸がアセチルCoAに変換される過程で、2xNADHを生成(=>NADH x2)
・クエン酸回路で、2xアセチルCoAは、6xNADH, 2xGTP, 2xFADH2を生成(=> NADHx6, GTPx2, FADH2x2)
・酸化的リン酸化で、NADHが下記のように処理:
解糖系で生成された2xNADHはシャトルされるので4xATPに相当。(つまり1:2相当)
ミトコンドリア内での反応では、計8xNADHが24xATPに相当。(つまり1:3相当)
他に、FADH2からは生成されるATPは、2xFADH2が4xATPに相当。(つまり1:2相当)
上記まとめると、細胞質で2xATP(解糖系)、輸送されたNADHから4xATP, ミトコンドリア内NADHで28xATPができる。GTPx2を含めて、ATP換算すると2+4+28+2=36分子。となるらしい。
*上記の1:2と1:3相当のところを3通り覚えたらよい(結論の数字:~36,38とともに)。
脂質について記憶
エイコサノイドとは何か?
糖から脂肪は合成できるが、逆はできない。コレステロールは胆汁酸・ステロイドホルモン・ビタミンDに変換される。
脂肪酸はエステル化されトリアシルグリセロールの形で貯蔵される。
脂肪酸は、アセチルCoAを元に、ATPとNADH(還元力)を使用して合成される。インスリンはこれを促進する。脂肪酸生成は分解の逆反応ではない。合成は細胞質で行われる。
*脂質合成は複雑であり、手を付けられない。恐らく出ないと思うが。。
トリアシルグリセロールとコレステロールの代謝を説明できるようにする。
β酸化(脂肪酸分解)を説明せよ
絶食時に、脂肪酸が燃やされてエネルギーを産生する。
・グルコース濃度が下がると、脂肪組織でトリアシルグリセロールが分解され、脂肪酸が血中に遊離する。肝臓・筋肉・腎臓で脂肪酸が酸化され、FADH2, NADH, アセチルCoAが産生される。
ケトン体について理解せよ。
アテローム性動脈硬化症の機序を説明せよ
・低比重リポタンパク質(LDL)は、アテローム性動脈硬化症により引き起こされる心血管疾患のリスクファクターである。LDLは抹消組織へコレステロールを運ぶキャリア粒子であるが、動脈でLDLが蓄積して酸化されると、マクロファージに取り込まれ、マクロファージは泡沫細胞(foam cells,ほうまつさいぼう)となる。最終的に内皮細胞が傷害され、泡沫細胞の壊死により炎症が起こり、プラークをつくる。
魚を食べるとなぜ身体によいのか
・青魚はω3(n-3)系統多価不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含んでいる(数字は二重結合の位置を示す)。
・n-3系統からつくられた物質はn-6系統からつくられたものと比較して生理活性が弱く、競合的に働くことで過剰な炎症反応や凝血反応を抑えるブレーキとなる。
・またEPAやDHAは、肝臓で転写因子SREBP-1cの活性を抑制することで血中のトリグリセリドやコレステロール濃度を下げる。詳細不明。
①【大人の医学部受験】元医学部教員の医学生が「学士編入」をゼロから詳しく解説
→ 医学部編入に必要な情報を網羅しています。
②医学生向け研究の始め方・取り組み方ガイド(医学生・学士編入志望者に有用)
③私が大学教員を辞めて医学生になった経緯(研究関係者・学士編入志望者に有用)
・天然の不飽和脂肪酸は殆どの場合二重結合はシス型である。トランス脂肪酸の多量接種がLDLコレステロール増加をきたすと言われる。