分子生物学の対策3(オートファジー・細胞分裂など)

オートファジーを説明せよ

オートファジーは飢餓時のみならず細胞小器官の更新のためにも重要。
1.オートファゴソームの形成:
細胞がストレスに晒されると、過剰・異常タンパク質とともにリン脂質が細胞質内に集まり「隔離膜」という脂質二重膜を形成する。これがオルガネラを取り囲む。
2.オートリソソームの形成:
リソソームと融合したオートファゴソームをオートリソソームという。内部のタンパク質、細胞小器官(膜内側のリン脂質)はリソソーム酵素により分解される。


Memo:
恐らく、詳しく対策する価値があると思う。(2017年現在)
疾患化の関わる例:
アルツハイマー病:

細胞の自食機能が欠失した掛け合わせマウスでは、細胞内にAβが蓄積してしまい細胞外へ排出されないため、脳内のアミロイド斑の蓄積量が減少したことを示しています。つまり、細胞の自食には、Aβの分解機能だけではなく、Aβを細胞外へと排出するという新しい機能があることが分かりました

(理研のプレスリリース2013,10より)
しかし、Atg7遺伝子欠損マウスとアルツハイマー病モデルマウスの掛け合わせマウスでは記憶障害の悪化が見られるらしい。

この結果は、細胞内のAβには強力な毒性があることを示しています

一方、2015年の
飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見のような報告もあるらしい(はっきりしない)。

がん:

オートファジーは発がん性形質転換の間、複雑かつ細胞状況特異的な役割をこのプロセスに果たしていることが示唆されています。オートファジーは総じて、正常細胞および早期の発がん性形質転換では腫瘍抑制性のようですが、確立された腫瘍に対しては重要な生存経路として働くと考えられます

(シグマアルドリッチの記事:オートファジーはがん細胞の薬剤耐性化を促進するより)
・オートファジーと疾患の関係は「場合に依る」感じがする。設問としてはやりにくいので出ないかもしれない。


ここで、組織学でいうところの「組織の分類」に言及する。4つのカテゴリを覚える。特に結合組織に注意すれば覚えることは易しい。
・上皮組織(密着結合で極性がある)
・結合組織(コラーゲンを産生する線維芽細胞が代表的。上皮組織の維持に重要。マクロファージ、マストセル、形質細胞、色素細胞もこのグループ)

・筋肉組織(骨格筋・心筋・平滑筋)
・神経組織(ニューロンとグリア)

Memo:
グループに入れにくいのは「結合組織」に入れてしまっている感がある分類。



Memo:
細胞分裂関係の対策としては、有糸分裂・減数分裂・MPF・胚発生・リン酸化ユビキチン化で進む概念、を「記述できるようにする」必要がある。

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有性生殖の進化的有利な点を説明せよ。


細胞の有糸分裂の過程を説明せよ

有糸分裂は真核細胞の核分裂の様式のひとつである(本来は減数分裂も有糸分裂であるが、一般に「有糸分裂」というと体細胞分裂を指すことが多い)。前期 → 前中期 → 中期 → 後期 → 終期 の5つに分けられる。
前期
・体細胞分裂の過程では、コヒーシンは複製された姉妹染色分体が直ちに離れないようつなぎ止めている。
・染色体凝集。このときコンデンシンが関わる。(”Condense”に関わる)
・コンデンシンとコヒーシンの拮抗的な作用が染色体分離に大事と考えられている(参考)。
前中期
・核膜(ラミン)が崩壊し、セントロメア(キネトコア)に微小管が結合。
(*ラミンは中間径フィラメントに分類されることに注意。)
・Aタイプのラミン(ラミンA)の特定の変異は、早老症や拡張型心筋症、筋ジストロフィーなどの遺伝子疾患を引き起こすことが知られている。核ラミナはラミンAとラミンBから構成され、核の内側でクロマチンを結合している(参考、ラミンCは組織特異的なラミン。)
・紡錘体が結合する構造部分を「キネトコア」と呼ぶ。
中期
・染色体が赤道上に並ぶ。(*分離する直前のイメージで覚えること!)
後期
・染色体(「姉妹染色分体」)が分離する(コヒーシンは切断されている)。染色分体が極(微小管形成中心MTOCを含む)にたどり着くまでが後期。
終期
・核膜が再生する。細胞質分裂のための収縮環(アクチン・ミオシンからなる)ができはじめる。


MPFを説明せよ

・Maturation promoting factor, 卵細胞の成熟促進因子として発見され、M期促進因子と同一である。
(==>重要*すなわち、染色体凝集・核膜の崩壊を誘導する)
・MPFの本体は、Cyclin BとCDK1の複合体。
<**「MPF=M期」と覚えておくと十分。>


減数分裂を説明せよ

Keyword:
始原生殖細胞 / 第一、第二分裂 / 第一、第二極体 / 二価染色体 / 胞胚(胚盤胞) / 原腸陥入

減数分裂・・・1回のDNA複製の後、2回の細胞分裂が続けて起こり、配偶子を形成する。最終的にできる細胞は1倍体である。
・減数分裂では、(DNA)複製された相同染色体同士が対合し、4本の染色分体からなる二価染色体を形成する。第一分裂の前に(二価染色体の段階で)、相同染色体間で交叉することによりキアズマ(Xになる構造)をつくる。ここで遺伝的組み換えが起こる。(「相同染色体間で相同組み換え」である。複製後の2染色分体は同じだから意味ない。)
・メスの配偶子である卵が卵源細胞からできる際、細胞分裂によってできる一方の細胞は極体として消滅するため、最終的にできるのは1個の卵源細胞から1個の卵である。

卵の成熟について
・思春期になると、減数第一分裂が再開する(LHサージとよばれるホルモンの上昇=>遺伝的組み換えと分裂)。
・排卵されるのは、(第一減数分裂が完了した)第二次卵母細胞(第二分裂の途中)と第一極体
精子の侵入によって、第二減数分裂が完了し、受精卵となる。第二極体は放出される。

==>非常にわかりやすいリンク
(*排卵されるときに第一極体が含まれることを記憶しておく。)

受精
精子の先体が透明帯に接近した時に起こる反応を先体反応(acrosome reaction)という。先体反応した精子のみが卵の透明体(細胞外マトリックス)を通過できる。その後、Ca2+により表層顆粒がエキソサイトーシスされることで受精膜ができる。核は融合し、精子由来ミトコンドリアは分解される。精子の鞭毛は微小管で動いている。



内胚葉・中胚葉・外胚葉を説明せよ

卵割
–> 受精卵は桑実胚になる(桑の実のよう)。
–> 中身が空洞になり、これを胞胚(胚盤胞)という。中の空洞は「胞胚腔」。
*胞胚の中に、内部細胞塊という、全能性をもつ集団がある。
–このああたりで卵割のスピードは落ちてくる–
–>胚の表面が陥入する(原腸陥入)。この時期を原腸胚という。
*このときの原口が肛門である。
–>陥入した中が内胚葉(endoderm)、外側が外胚葉(ectoderm)、間が中胚葉(mesoderm)である。

Memo:
内胚葉=消化管上皮、膵臓、肝臓、肺、甲状腺、、
中胚葉=脊椎、筋肉、心臓、血管腎臓、生殖腺
外胚葉=表皮、神経、感覚器


発生の原理を説明せよ

「誘導物質の濃度勾配によって、位置情報が機能情報の発現に変換される。」
「誘導物質の分泌細胞からの遠近という、位置の相違が、受容できる誘導物質の濃度差として反映されることで、その位置にある細胞が何に分化するかが決まる。」

上記の表現は分かりやすいと思われる。

「誘導物質を分泌する細胞からの遠近(という位置情報)が、濃度情報として反映され、その位置にある細胞が何に分化するのかが決まる。」

上記の表現が書きやすいか。

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覚えておきたい単語として、オーガナイザー(形成体) / Delta, Notch, Shh(Sonic hedgehog) などが挙げられる。