MDとnon-MD研究者の年収と年齢
医師をMD(medical doctor)と言い、それ以外をnon-MDと言ったりします。臨床研究でなく、基礎医学の研究であれば案外non-MDでも平等に評価されます。基本的に、研究成果は平等に評価されるので不当な差別はあまりないのです。
ただし、non-MDが研究者として生きていくのは経済的な問題・キャリア形成の困難が半端なく大きいので、この記事ではそのような金銭的問題について具体的な数字を挙げて説明していきます。
20代前半:格差は大きくない
学生の間は、医学部生と非医学部生の収入格差は大きくありません。医学部ブランドで時給が上がる教育関係のバイトもありますが、それは医学部でない高偏差値学生でも同様だと思います。
研究者を目指す非医学部生は学部卒業後に大学院修士課程に入学します。現役で大学に入っている場合、22-24歳の間ということになります。この年齢の期間は、医学部生は5,6年生なので彼らも学生で無収入またはアルバイト収入のみです。よって、24歳までは医学部とそれ以外での収入格差はあまりありません。
20代半ば:医師のキャリアスタート
研究者を目指す非医師は修士課程修了後、博士課程に進学します。基本的に無給なので収入があるとしたらバイト代のみです。この時期に医学部生は医師免許を取得しており、研修医として働き始めます。研修医の期間はアルバイトが禁止されており、その代わりに300-400万円という最低限の年収が制度的に定められています。
研修医の給料は、医師なのに安すぎると主張する風潮もあるようですが、理系大学院だったら修士卒の年齢ですから、既にこの額の給料が保障されていることはかなり恵まれています。研究者を目指す非医学部の学生は博士課程に進学するので、最短でも27歳までは無給もしくは収入はバイト代のみです(普通は忙しくてバイトはほとんどできません)。
20代終盤:格差がますます広がる
医学部生の中で研究志向がある人は研修医を経てから大学院博士課程に進学します。医師アルバイトとして働くには研修医経験が必須なので、医学部卒業直後に博士課程に進学する人はほとんどおらず、研修医を経るのが一般的です。研修後に博士課程に進学した医師は、診療のアルバイトで学費を稼げます。医師アルバイトの時給は数千円から数万円程度なので、週1午前中だけ働けば十分な生活費が得られます。
一方、研究者を目指すnon-MDが学位取得できるのは27歳の時ですが、多くの場合、博士研究員(ポスドク)として研究室に雇われます。このときの給料平均は年350万円程度なので、25-26歳の医師(研修医)よりも同等かやや少ないくらいです。また、350万円というのは、研修医以後の医師なら週1,2回のアルバイトで余裕で稼ぐ額です。
non-MDのキャリアでは、医学生が卒業後に研修医をやっている間も大学院で研究を行っているので、「早い時期により研究に専念できる」点では恵まれたキャリアです。しかし、27歳以後いつまで続くか分からないポスドクの平均的な年収が、医師の最低賃金の同等レベル以下というのはちょっと、経済的な不平等感が大きいと思います。
なので私の考えは:
基礎医学や生命科学の研究者を目指すなら、普通に医学部に入学しましょう。既に大学生以上の人には医学部編入もお勧めです。
追記(警告?):
医学部に入る学力・能力がない人は、そもそも生命科学の分野で研究者として成功する見込みもかなり小さいと思います。(この業界で勝ち抜くのは医学部に入るどころの難易度ではないです。個人の資質や研究分野によって程度は異なるでしょうが、全体的に分子・細胞生物学分野をみると難易度高すぎです。)
追記:勝ち抜けるつもりの人は上記は無視して大丈夫です。