第一三共によるがん免疫研究
Daiichi does I/O research deal with Portland upstart, 2016
この記事で、第一三共は、がん免疫(Immuno-oncology)領域の医薬品開発を目指す米ポートランドのAgoOx社と協力して前臨床試験を行い、結果次第では世界での臨床開発と販売に関する権利を得るとされています。AgonOx社にとっては大手製薬会社との取引は2度目であり、2011年にAstraZeneca(アストラゼネカ)との取引があったようです。
AgonOxは抗OX40モノクローナル抗体を作成し、アゴニストとして機能することで腫瘍特異T細胞を増強することでがん治療を目指しているようですが、現在のところ上市は実現していない模様。上述の、第一三共とAgonOx社のパートナーシップについては、OX40の発現解析や機能解析が言及されており、相当基礎レベルの研究が含まれている印象を受けます。
AstraZenecaもOX40抗体であるMEDI5062を開発中であり、免疫抑制分子であるPD-L1を標的とする抗体と組み合わせで効果を探るという戦略があるようです。ビッグファーマを中心に、製薬業界では腫瘍免疫が流行っているようですが、第一三共らに勝算はあるのでしょうか。
「免疫抑制経路(免疫チェックポイント)を解除して抗腫瘍免疫を誘導」というのが基本的なメカニズムとされていますが、効果がある人とない人がおり、その理由がほとんど分かっていないことが(薬価が高いことに加え)問題になっています。
OX40について
OX40はCD134とも呼ばれ、活性化したT細胞膜に発現している膜タンパク質で「TNFR/NGFRファミリー」に属します。OX40のリガンドであるOX40Lは樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)上に発現しており、OX40-OX40Lのシグナル(いわゆる「共刺激経路」)を受けることによってT細胞は生存と活性化(ヘルパーT細胞への分化)が誘導されます。
すなわち、がんではOX40-OX40Lシグナル経路が適切に働いていないために抗腫瘍T細胞が十分に働いていないと考えられており、そのためOX40シグナルを入れてやるモノクローナル抗体の開発が進められているということです。