東京医科大学の裏口入学について私見

文科省の局長だったS氏が、大学支援の見返りで自分の息子を不正合格させた事件に関して、私見を書きます。炎上するほどじゃないと思いますが、勝手なこと書いていくのでご了承ください。


そもそも私立医大は金持ち限定・不公平

佐野容疑者は、東京医科大学(東京都新宿区)から「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象選定で便宜を図るよう依頼された見返りに、今年2月、息子を同大に不正合格させてもらったとされる。(018.07.11文科省局長汚職、大学補助金と官僚の息子の裏口入学の「闇」

この件で不公正があったのは、①「税金での大学支援」と、②「東京医大の入試」、の両方だと思いますが、どうも、②「東京医大の入試」での不公正に着目したニュースが多いのが気になります。一般人の立場からすると、私立大学の受験者選別よりは、税金の不当利用の方が非難の対象になるべきだと思うのですが、何だか大学を「裏口入学させた!」と責め立てる視点が多くて不思議です。

そもそも、国立医大生の私から見て、私立医大の入試に公正さはないと思います。非常に高い学費によって、(親が)金持ちであるかどうか選別しているからです。(一部例外はありますが大部分はお金。)

東京医大の学生さんが言うには、

1年生の男子学生(18)は「それが許されるのならば、なんでもありになってしまう。他の学生にあまりに失礼だ」。(018.07.4「他の学生に失礼」「3浪してようやく入学」怒りの現役学生 “裏口入学”文科省局長逮捕

だそうですが、いや、むしろ「あなたは東京医大の学費数千万円をどうやって工面できるの?」と聞きたい。たぶん、大部分の学生は「勉強はできなかったけど親が金持ち」だから、国立大ではなく東京医大に入学したんだと思います。なんだ結局親の力じゃないか。(別にそれはいいと思います。世の中お金で回ってますから。でもせめて自覚した方がいいと思うのです。)

と思っていたら、最近の報道によると、性別によって入試得点の調整が行われていることが明らかになって、(上の男子学生さんは何を思うのだろう…)

入試の際に一律減点とされるなど女子の合格者数が抑制されていたことに東京医大の女子学生からは不満が漏れた。ただ、背景には医師不足や過酷な勤務の実態もあるとされ、男子学生らからは複雑な心境ものぞく。(018.08.02 女子減点「チャンス奪われた…許せない」憤る学生 東京医大の合格者抑制に不満の声

だそうですが、うーん。
 

こういうのは私立大学では周知の事実だと私は思ってました。女子3割に決めるような性別調整は明らかに好ましくないことだけれど、女子学生たちの多くも、恐らく学力不十分だったために東京医大を受けたわけだから、お金の問題で私立医大を受験候補にいれられなかった私からすると、あまり共感はできないかな。(知らなかったと言う受験生がいるかもしれないから、前もって7割男子大学であると、明文化すべきだったのかな、それならそれで騒がれますが。)


入試だけ着目して責めるのは視野が狭すぎる

男女差別があったという観点で、ここでも「東京医大の入試」がクローズアップされていますが、だいたいの批判者は「大学運営の立場」を考えていない点でとても浅はかだと思います。大学には公的な役割がありますが、会社と同じで、利益を出すための経営努力によって「大学運営」されているのも事実です。私立大学の場合、(1)学生からの納付金や、(2)附属病院収入、が重要な収入源になっています。(参考:「私立大学の財政基盤について」(文科省資料) )

なので、大学運営側から見たら(1)できるだけ高い学費・寄付金その他を払える学生を募集し、(2)医師に育て上げた後は病院で長く働いてもらう、という二点が重要な採用基準になることは、とても自然なことです。医師になってから離職せず長く働いてもらえる見込みの高い人を、優先的に入学させたいと大学側は考えてしまうんです(たぶん、日本型の普通の会社と同じです)。

このように男女で採用に差をつける状況は(会社の採用の場合と同じで)、全く好ましくないですが、入試の不公正だけを指摘しても問題は解決しないです。もし現状のまま女子率が拡大したら、どちらかというと、医師不足と偏在が悪化して日本の医療全体としては負の影響のほうが大きいかもしれません。それを防ぐには「多くの女性医師がすぐに離職する医師の働き方が変わればいい」ということになると思いますが、それは医学部だけの問題ではないですし、容易に解決する問題ではないと感じます。


言いたいことのまとめ
①足りない学力をお金で補える人が私立医大に入学するのだから、元々不公平。
②もし現状のまま男女差を埋める理想だけ主張すれば、医療崩壊が加速しそう。
③私立大学の運営(入試含む)よりは、税金の不適切使用を企てた文科省が非難されるべきはず。

①の捕捉:医学部では年齢や出身地で有利不利があることも有名です。
「地域医療に貢献してくれそうな」地元出身者を優先的に採用するのは差別(?)55歳受験生が面接で減点されたら差別(?)医師を育てるのにはお金(税金)がかかるんですけどね(1億円とか聞くけど根拠は知りません)。

参考:
フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方 (光文社新書)」では、女性医師のキャリアや女子学生の合格率のお話もあって興味深い内容でした。

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