大学研究者の職位と違い。PIって何?

このページでは、研究室に所属したことがない人や所属して間もない人に向けに、大学教員の職位について説明します。

ポスドク(博士研究員)は教員ではないので、別記事で紹介しています:ポスドク、特任助教・助教の違い


大学教員の職位としては、下記の構成が一般的です。

1.教授(一番偉い)
2.准教授(偉い)
3.講師(ふつう)
4.助教(下っぱ)
(5.助手(あまりいない下っぱ))

権力はふつう、教授>>准教授>講師>助教(≧助手) となります。


教授・准教授はとりあえず偉い

通常は「教授」は研究室の主宰者(中心人物・代表・責任者)であり、研究室内で絶大な権力を持ちます。英語ではPI(principle investigator)という表現がよく使われ、教授=PIであることは一般的です。PIの定義はこちらの文科省のページがわかりやすいですが、一言でいうと「PI=研究グループの統括者」といった意味です。

教授の給与はざっくり言うと年収1000万円くらい、その他講演会とかでプラスアルファの収入がある場合が多いと思います。教授以下の下っ端の役職と比べて、教授は任期なしの終身雇用で大学に雇われていることが多いです。大学では比較的個々の研究室が独立して研究を行うため、教授の権力が研究室内で絶大です。しかしながら、契約的には大学(や研究所)に雇われている労働者にすぎないので、大学全体の問題に関わるような不祥事を起こせばクビになる可能性もゼロではありません。といっても、自分の研究室運営を上手くやっている教授は大学(の運営と評判)にも貢献しているということでもあるため、そういった教授は大学当局に対してもある程度の影響力・政治力を持っているはずです。

教授の次に偉い職位が准教授です。昔は「助教授」と呼ばれていた人たちが現在「准教授」と呼ばれています。あまり多くはないですが、准教授でも上述の「PI」に該当する人もいます。ただ、一般的には研究室に教授一人いて、その下に准教授が一人ついているパターンが多いです。

大学の規定次第ですが、准教授は教授ほどは大学運営に関わりません。なので、教授と比べて研究室外よりも研究室内の仕事に関与する比率が高いと思います。早い人で30代の後半から准教授ですが、准教授で定年を迎える人もいます。教授と比べるとランクが低いのも事実ですが、准教授になれれば研究キャリアの中では上手く行っている部類だと思います。国立大で、平均の年収が800万円台になります。


講師以下は下っ端教員

大学の職位における「講師」は通常の理系研究室では准教授と助教の中間の地位になります。形式上は助教よりも偉いですが、感覚としてはあまり変わらない感じもします。大学によっては講師から学生の授業を担当するというような、何らかの大学運営に携わるルールがあったりします。30代後半以上の人が多いと思います。高齢の講師はややネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、講師のまま定年を迎える人も多くいます。通常、教授の部下の立場なので研究室内での権力もほとんどないですが、十分な給料は得られます。平均すると国立大学の講師なら年収700万円はあるようです。大学の正規職員としての講師は、「非常勤講師」とは全く異なるので注意してください。

「助教」は大学教員の中で下っ端です。学生に年齢的にも近いはずなので直接の指導・相談役という役回りも多いと思います。研究能力的にはポスドクと変わりない場合が多いです。むしろ、ポスドクは大学ではなく研究室によって、専ら研究者として雇われているため、ポスドクの方が助教よりも研究に専念して業績を得やすいかもしれません。ただしポスドクと大学の正規助教では普通、待遇が全く違いますので、よほどのことがない限り博士課程を終えた若い研究者やポスドクはまずは助教を目指します。運が良ければ大学院修了後すぐに助教になれます。大学によっては、助教が学生向けの講義を担当することもあるようです。昔は助教授という職位がありましたが、助教は全く別物で、ずっとランクが低いので間違えないようにしてください。たいてい、雇用に任期があって、数年ごとの更新制だと思います。年齢にもよりますが、助教の任期が終わる前に、講師か准教授・教授を目指して転職活動するのが理想的です。

助教に対して、「助手」はあまり見られない職です。名前から予想されるように、教授を助けるという意味合いがあります、少なくとも私の周りでは、技術系のスタッフ(一般にテクニシャンと呼ばれる人)が、形式的に助手として採用された例があるくらいです。学位取得後の若い研究者は、自律的な研究者という建前なので「助教」としての採用される方が一般的です。助手は何らかの事情があることを想像させます。


特任・特命~には注意が必要

最近は「特任助教」「特命教授」「客員教授」などが多いですが、これらはいわば正規職員に対する契約職員(言ってしまえば非正規雇用)であります。予算に応じて臨時的に雇用される職なので、特に、元々立場の弱い「助教」で、そこにさらに「特任」と付いてる場合は、雇用の不安定さを暗示します。一方「~教授」であれば既に社会的な立場を持つ人を特殊な形態で雇用しているということなので、必ずしも不安定とは言えず、被雇用者にとっての不利益も小さいかもしれません。

特任助手・特任助教になると雇用される際に注意が必要です。といっても、ポスドクや一般的な博士研究員よりはマシなことが多いです。見かけ上も大学教員なので、履歴書的にも悪くないでしょう。


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では。