分子生物学の対策2(超基本)

医学部学士編入試験、生命科学研究科の大学院入試などで頻出の、接着分子、細胞骨格、細胞内小器官についてのページ。必ず覚えてください。


細胞接着のグループを4種類(または5種類)答え、それぞれ説明せよ。何と何を接着させるか、及び関与する分子名も含めて答えよ

At a glance
・接着分子として、セレクチン・インテグリン・カドヘリン・免疫グロブリンスーパーファミリー(~CAM)、の4種類は重要。
・細胞接着の種類としては、密着結合(tight junction)・接着結合・デスモソーム・ギャップ結合・ヘミデスモソーム、の5種類が重要。


代表的接着分子
・Selectin:糖鎖を認識
・Integrin:細胞外マトリックスを細胞骨格とつなぐ
・Cadherin:Cadherinどうしを接着(Ca2+依存である。細胞の選別に利用される)
・IgSF(~CAM):Ig様ドメインを持つ多様なファミリー。カチオンに非依存で細胞どうし、あるいは細胞外マトリックスを結合する

代表的な細胞接着のタイプ
密着結合:クローディン・オクルディンが介する結合。上皮細胞の極性などに関わる
接着結合:カドヘリンによる結合。アクチン―カテニン―カドヘリン=カドヘリン―カテニン―アクチン
デスモソーム:デスモグレイン(カドヘリンファミリー分子)がスポット状に結合をつくる(*細胞どうし)
ヘミデスモソーム:上皮細胞が細胞外マトリックス(基底膜)と結合。インテグリン―XII型コラーゲン―ケラチン(中間径線維)。スポット上。
ギャップ結合:コネキシがトンネルをつくる。心筋や平滑筋などで重要。

<*ギャップ結合はシナプス結合などとともに「連絡結合」に含まれることある。密着結合は「閉鎖結合」に含まれることがある。このとき、接着結合・(ヘミ)デスモソームは「固定結合」にカテゴライズされる。>

Check
/デスモソーム、ギャップ結合を形成する中心となる分子名は?/ ヘミデスモソームの形態・関わる分子は? /



細胞外マトリックスの例を挙げて関わる分子を含めて説明せよ

・構造(基質)となるもの、線維をつくるもの等がある。

基質となる細胞外マトリックス分子として、グルコサミノグリカン(GAA, ヒアルロン酸もこのグループ)やプロテオグリカンなどがあり、これらは「ムコ多糖」とよばれる。例えば関節腔に多く存在して潤滑(じゅんかつ)作用をもつ。他に、基質となる細胞外マトリックス成分として、フィブロネクチン(・・インテグリンと結合)やラミニン(基底膜に存在)やエンタクチンが挙げられる。

線維となるものとして、膠原繊維(collagenous fiber)と弾性線維が挙げられる。膠原線維は圧縮に対する強度を与え、関節の軟骨などに存在する。弾性線維はエラスチン分子から構成される。エラスチンはゴムのような性質があり、コラーゲン線維を支えて弾性を与える。



代表的な細胞骨格を3種類、それぞれの例を挙げながら説明せよ

Check
微小管の径を答えよ / 微小管の機能例を2つ、アクチンフィラメントの機能例を5つあげよ / チュブリンのエネルギー源は?

まとめ
・アクチンフィラメント(径8nm), 中間径フィラメント(径10nm), 微小管(径25nm) がある。
アクチンフィラメントは急激な変化の基盤であり、下記の役割を担う:

・アメーバ運動(ミオシン)
筋収縮
・細胞分裂の際の、収縮環(・・・細胞膜の内側にバンドができる)
・消化管の上皮細胞の微絨毛(びじゅうもう)の芯。
ファゴサイトーシス

中間径フィラメントは核を囲む形でかご状の構造をつくる。核を固定する役割をもつ。
病理診断によく利用される。細胞の由来により中間径フィラメントが決まっている。どのタンパク質も「より合わせコイル構造」を持つ点で共通している(wikipedia)。

・ケラチン(上皮)
・ビメンチン
・デスミン(筋)
・GFAP(グリア)
・ニューロフィラメント
・ラミン(核、伝統的に中間径フィラメントに分類される)

微小管はチュブリンのヘテロダイマーを基本構造とする筒状の細胞骨格。中心体から周りへ(+側へ)伸ばしていることが多い。中心体がMTOC (Microtuble organizing center)となる。そこにγ-チュブリンが存在することが知られている。極性を持ち、重合と脱重合を繰り返す(=伸びたり縮んだりする)動的不安定性の性質がある。例えば下記の構造を構成する:

・細胞分裂の際の紡錘体
・鞭毛や繊毛。

微小管の表面上をモータータンパク質が動く。例として、
・ダイニン(+から―側へ)
・キネシン(-から+側へ)

が挙げられる。これらはATPをエネルギーとしてで動く。チュブリンの重合はGTPを利用していることに注意(チュブリンはGTPaseである)。


下記のようにまとめることができる。
・アクチン - ミオシン系
・チュブリン - ダイニン系
・チュブリン - キネシン系
これらが動きをつかさどる分子基盤である。



滑面小胞体と粗面小胞体をそれぞれの具体的な役割(3つずつ)に言及して説明せよ

小胞体は脂質膜に囲まれた網目状あるいは板状の細胞内小器官で、核の外膜とつながっている。外観から2種に分けられ、このうちリボソームが細胞質側表面に付随しているのが粗面小胞体である。

粗面小胞体(RER)の役割として下記が挙げられる:
・分泌タンパク質の合成
・膜タンパク質の合成
・リソソーム酵素の合成(加水分解酵素,pH5で働く。)

また、大部分の糖鎖付加反応は粗面小胞体で起こる。糖鎖付加は小胞体ではN-結合型グリコシル化である(O-結合型は主にゴルジ体)。立体構造の異常なタンパク質がERに蓄積すると、「小胞体ストレス」を引き起こし、ユビキチン・プロテアソーム系を駆動することも覚えておくこと。

滑面小胞体(SER)では下記の役割が担われる:
・代謝(脂質合成)
・イオン貯蔵(Ca2+のこと。IP3Rが存在する)
・薬物代謝(肝細胞で重要。cytochrome P450などが局在している)


Memo:
タンパク合成に関連する以外の主な機能については、滑面小胞体(SER)とみなした方が理解しやすい。
Tips:
リソソーム膜にはプロトンポンプ(V-ATPase)があり、プロトン(H+)を取り込んでいる。
リソソーム酵素の欠失(リソソーム病)では特に、プロテオグリカン(ムコ多糖)やスフィンゴ糖脂質の分解が障害を受け、中枢神経系の障害を起こしやすい。

 

未確認:
胃酸の分泌を阻害するプロトンポンプ阻害剤が(H2ブロッカーほどではないが?)使用される。
胃酸放出は刺激に応答した小胞からの分泌らしい(資料)。