男女差別求人に反対

研究者の男女比と雇用差別について書きます。前半はデータ中心で、後半が私の考えです。

統計局のデータ

平成29年発表のデータによると、着々と女性研究者率は増加しているようです。下のグラフは企業・大学・公的機関の研究者数を示しています(総務省統計局のデータからの引用です)。

総務省の要約資料によりますと、「研究」とは、

事物・機能・現象等について新しい知識を得るために,又は既存の知識の新しい活用の道を開くために行われる創造的な努力及び探求をいう。ただし,企業及び非営利団体・公的機関の場合は,「製品及び生産・製造工程等に関する開発や技術的改善を図るために行われる活動」も研究業務としている。

を言い、「研究者」とは、

大学(短期大学を除く。)の課程を修了した者(又はこれと同等以上の専門的知識を有する者)で,特定の研究テーマをもって研究を行っている者をいう。

ということらしいです。

ということらしいです。

当ブログ筆者は大学等に属する研究者ですが、企業の研究者数が意外と少ない、と印象を持ちました。人数では4万人台だからアカデミアの女性研究者の半分強。企業の研究者に占める女性率は8%程度に過ぎないらしいです(大学では25%~。下図)。

上述の研究者の定義では「製品及び生産・製造工程等に関する開発や技術的改善を図るために行われる活動」に従事する者も企業研究者に含まれているので、かなり範囲が広いと感じますが、それでも大学等に勤める研究者よりも絶対数が少ないのは意外です。

官僚は女性採用を増やすように大学に圧力かけているから、その成果かな。企業も大企業だと女性の働きやすい環境を猛烈アピールしているのをよく見かけるけど、研究者に限って比較すると、企業よりも大学の方が女性比率がずっと高いみたい。


やりすぎだと思う

とはいっても、国の圧力による大学の女性研究者優遇の度が過ぎているとも感じます。若手研究者募集で「能力が同等と考えられる場合は女性を優先して採用する」みたいな明確な差別的求人(*1)が多く、かなり不快です。

大学や研究所が、「女性研究者が増えた」ことを業績としてアピールするために、女性優遇求人が出てくるわけなのですが、就職先に困っている若手研究者の立場からすると不公平感が大きいです。少なくともわたしの周りでは、女子学生自身も優遇されていることを自覚しており、男女平等の理念で教育されてきた世代(男女とも)からみて違和感は半端ないです(*1)。

わたしが思うに、この種のアファーマティブアクションを(若手教員が普通採用される)30代で行うことが奇妙です。女性研究者を増やすべきだと考えるなら(*2)、ずっと早い段階での政策が必要だと思います。いくら遅くても大学進学時、つまり18歳前後まででしょう。「教育を受ける機会を平等化する」ための10代の女子優遇がもし必要であるなら(私はそのやり方は適切でないと思うけれど)、少なくともアカデミア研究者の就職時の優遇よりはマシだと思います。研究という業務は個々の能力への依存が極めて高いと考えられ、こういう職種に就く際のアファーマティブアクションを、しかも高齢で行うなんてのは最悪です。日本の研究力低下を促進しています

*1: 実際のところ、同じ能力であれば女性が優遇されて職に就く事例が存在するので、同じ職に就いている場合の男女を比べた際に「男性の方が能力が同等かそれ以上である」可能性が50%以上ということになってしまう。教授クラスについては比較的差別が少ないと思うけど、「職務能力以外の要素(性別)に基づいた就業上の不平等」を公的機関が推奨していることは残念。ますます若手のモチベーションを削ぎ、日本の研究レベルを落とすだろう

*2:「ほかの先進国と比べて女性研究者率が少ないので、増やすべき」という論調が多く、これもまた奇妙。他国は異なる事情を持っていると考えられ、もし女性研究者を増やす必要があるのなら「どのような異なる事情が日本にはあった結果、女性研究者率が低いのだろう?」と考えるのが自然だと思う。他の先進国云々は全く理由になっていない。表面的に女性研究者を増やすのは簡単だろう(大学をお金で釣ればいいだけだ)けど、良い影響があるか疑問。単に日本の競争力を低下させるのを促進しているだけ(日本の失速についての関連記事)。表面的な理想だけ掲げて上手くいかなかったかつての「ポスドク1万人計画(*)」が思い出される。

*この政策でポスドク(博士研究員)の増加は達成されましたが、最終的な目的だった科学産業の振興に彼らは貢献せず、量産された(能力の低い)ポスドクの就職問題を引き起こしました。ポスドクの苦労を見た若い世代が博士号取得を目指さなくなっており、失策の影響が続いてます。


一般的に、偏差値上位大学の、特に理科系学部では女子学生比率が低いです。
2016年東大の資料(東京大学の概要)数字で見る東京大学の中の資料)で調べたら、東大女子学生の比率は:

理学部:12.7%
工学部:10.1%
農学部:25.6%
薬学部:23.4%
医学部:18.9%

でした。
女子率10~25%ですね。東大の大学院ではどうでしょうか。

理学系:16.7%(修士)→ 16.0%(博士)
工学系:14.5%(修士)→ 16.7%(博士)
農学生命科学:33.2%(修士)→ 37.4%(博士)
薬学系:22.4%(修士)→ 21.1%(博士)
医学系:62.6%(修士)→ 34.9%(博士)(*医師が多いと思う)

と、女子率が増加します。それで15~35%程度。

周知のとおり、日本では大学(学部)に入る際に強いセレクションがかかり、そのため「東大卒」が高学歴の象徴になっています。逆に大学院入試の筆記試験はあってないようなもので、まともな学生は通過できるので事実上ここでセレクションはかかりません。。だから学歴ロンダリングの対象となるし、修了者が高学歴難民になるリスクが(学部卒よりも)高かったりします。

学部入学時に理系女子は少ないが、セレクションのない大学院では女子率が高まる。そして博士課程修了後には政府主導アファーマティブアクションで就職ですか。。。

教授クラスだと男性研究者がやはり多いので、上のグラフで最近の大学の女性研究者が26%なら、新規採用の若手ではもっと女性率が高いということかもしれません。偏差値トップの理系女子が10~25%であることを考えると、既に公平でないような感覚を覚えます。(もちろん偏差値=研究者能力、ではありませんし、東大は旧帝の中で特に女子が少ない方なんですが。)

これでは、プライドの高い(いい意味です)旧帝国大学の女子学生の自立心を傷つけていると思う(ロンダは除外)。


前記事の、「研究者と結婚」のつづきを書こうと思ったのですが、話題がそれてしまった。引き続き、当ブログを宜しくお願いします。