分子生物学の対策1

生物系の学生にとって基本中の基本です。高校生物未履修であれば抜けがあるかもしれません、注意してください。このページの内容は、基礎的・古典的内容が多くあまり最近では出題されないかもしれません。しかし「(ライバルの)他の受験生は学んでいる可能性が高い」ため、十分に対策していた方がいいと思います。


メンデルの法則を説明する

・優性の法則・分離の法則・独立の法則、を理解しておく(2対立遺伝子が同一染色体上にある際すなわち「連鎖」は独立の法則に合致しない例である)。
・検定交配(劣性ホモ接合体との交配)を記憶しておく。

伴性遺伝を例とともに理解する

・ヒトの場合、X染色体上の遺伝子変異で劣性遺伝する疾患が知られている。血友病や色覚障害などがある。(ちなみに、Y染色体上の遺伝子の変異による疾患はごくまれである)

集団遺伝でのHardy-Weinbergの法則を記憶する

対立遺伝子の出現頻度は世代を超えて一定である、という法則がHardy-Weinbergの法則。
(適応度の差があまりないこと、近親婚がないこと、集団に一定の規模があること、等が前提)
*ところで、遺伝的平衡という概念も覚えておく。例:新規に発生する遺伝子変異によって変異遺伝子が常に集団に供給される(そのため生存に不利と考えられる遺伝性疾患が淘汰されない)。*このあたりは「ゲノム進化」のカテゴリからの設問もあるので題意の把握の上で注意が必要。


遺伝物質がDNAであることの証明実験

・アベリーの実験を記憶する。
・マウスの肺炎球菌R型を摂取してもマウスは(肺炎により)死なない。R型菌の培養液に、S型菌を加熱した抽出物(+DNA分解酵素)を加えると菌が形質転換(相同組換え)し、摂取したマウスが死ぬ(DNA分解酵素処理した場合は死なない)。
・ハーシーとチェイスのファージ実験も重要(ファージの遺伝子がDNAであることを証明)
・放射性同位元素32Pと35Sでラベルした大腸菌に感染したファージを新規にラベルなしの大腸菌に感染させる。このとき大腸菌から32Pは検出されるが、35Sは検出されない。
memo:
ファージがDNAを大腸菌に注入してそれが伝播することを強くイメージするとよい

半保存的複製とその証明実験の説明

・メセルソンとスタールの実験。大腸菌を15Nのみの培養液で培養し、1,2,,回通常培地で複製させたのちDNAの重さと存在比を計測する。

*アブなそうな肺炎菌を使ったのがアベりー、放射性同位元素でDNAをチェイスしたのがハーシーとチェイス。
・λファージとFプラスミドは記憶するべきであろう。

 

小さな DNA 分子「Fプラスミド」です。通常は細胞質に存在し,「Fプラスミド」保有株が雄, 非保有株が雌です。「Fプラスミド」を保有する雄は, F繊毛をもち, 一方の雌は1本もこの繊毛がありません。雄のF繊毛は「Fプラスミド」が作り出すもので, 雌を抱え込みます。これを接合 (conjugation) と呼び, 雌の細胞内に DNA を注入します。つまり遺伝子の交換が行われるのです。「Fプラスミド」は輪ゴムのようなリング状で, 普通は細胞質中に存在しているのですが, 時に染色体DNAに組み込まれてしまうことがあり, そのようになった株を Hfr (High frequency of recombination) 株と呼び, 極めて効率よく遺伝子の交換を行う。(Fプラスミドの説明

 


染色体の構造の基本を押さえる

・セントロメア:分裂時に微小管がつくところを特にキネトコアとよぶ
・複製開始点:真核細胞であれば1染色体上に複数ある。
・テロメア:染色体の両端。(セントラルドグマの反例がテロメラーゼであるのも覚えておく)

「ゲノム」を説明せよ

*書く練習をしよう。
ある生物の全遺伝情報の1セットをゲノムという。
・ヒトでは2対46本の染色体をもち、体細胞では2コピーずつ存在することになるので、ヒトゲノムは1対23本の染色体の全塩基配列であると定義することもできる。
・遺伝情報はDNAの4種類の塩基の配列として記録されている。


セントラルドグマ関係の因子はエッセンシャル細胞生物学とかのイラストで印象付けたほうがいいと思われる。

DNA複製を説明せよ

・岡崎フラグメント・トポイソメラーゼ・DNAヘリケースはそれぞれ説明できるようにする。
・p76の「複製バブル」を理解する。真核生物では複製開始点が染色体上に複数あり、その単位をレプリコンと呼ぶ(原核生物では1つ)。

相同組換えの例を挙げよ

・100bpオーダーで類似あるいは同一の配列間で起こる組換え。ホリデー構造をとる。減数分裂、DNA修復、KOマウス作成、などと関連。

SSR(部位特異的組換え)を真核・原核細胞それぞれでの例を挙げて説明せよ

SSRは相同でないDNA領域でおこる、非相同組換えの重要な例である。
・DNAトランスポゾン(DNA転位因子*DNAであるので注意)、TCR (BCR)の遺伝子再構成、λファージの溶原化(ファージが大腸菌のゲノムDNAに組み込まれること)、が非相同組換えの例である。リコンビナーゼが働く。

トランスポゾンを説明せよ

・トランスポゾンはゲノムDNA上を移動する塩基配列であり、移動する際に自己の複製を伴うものと伴わないものがある。
・DNAトランスポゾン(DNAのまま染色体をある部位から別部位に移る)のほかに、移動時にRNAを経由するレトロトランスポゾンがある。レトロトランスポゾンには、ウイルス様トランスポゾンとポリAレトロトランスポゾンがあり、複製時にコピー数を増加させる。ヒトゲノムの半分近くはレトロトランスポゾンである。
・ウイルス様レトロトランスポゾンはまさにレトロウイルス(HTLV-1のような)のように、RT, インテグラ―ゼをコードしている。
・ポリAレトロトランスポゾンは、ヒトゲノムではLINEが代表的である。LINE(長鎖散在反復配列))コード領域が2つあり、ORF1にRNA結合タンパク質、ORF2の転写産物はRTとエンドヌクレアーゼ活性を持つ。SINEは短いポリAレトロトランスポゾンであるが、RTはコードされていない(他の領域のRTの力を借りる)。
memo:
ポリAレトロトランスポゾンなどという呼び方は一般的ではないと思う。LINEのような、反復回数に個人差がある領域はDNA鑑定に利用されうる。マイクロサテライトが一般に個人鑑定に利用される。

RNAポリメラーゼ各種について覚えておく

・原核生物ではRNAポリメラーゼは1種類しかない。コア酵素とシグマ因子というタンパク質からなる複合体である。(σ因子を介してRNAポリメラーゼがDNAに結合する。転写中はσ因子は解離する。転写終結時にはρ因子が結合する。)
・原核生物のRNAポリメラーゼは校正活性を持つらしい。
・真核生物では、mRNA合成に働くのがpolIIである。詳しく言うと、polIはrRNA, polIIはmRNAとsnRNA(スプライシングに関与)、polIIIはtRNAとrRNAの一部を合成する。RNAポリメラーゼは校正活性をほとんど持たない。
・原核生物のσ因子に相当するのが、「基本転写因子」であり、たくさんある。

RNAのプロセッシングを説明せよ

・転写されたRNAの5’末端に、メチルグアニル酸が付加される(5’キャップ)。これは翻訳に必須の構造である。3’末端側にポリAテール。スプライシング、を経てから細胞質に運ばれる。

転写因子について説明せよ

RNAポリメラーゼがDNAに結合するのに必要なタンパク質を総称して転写因子といい、遺伝子の転写に必須である。どの遺伝子の転写にも必要なタンパク質を基本転写因子、特定の遺伝子の転写調節に関わる転写因子を転写調節因子と分けることもある。
(*普段研究で使われる「転写因子」はかなり狭義で「転写調節因子」に相当する場合が極めて多い。なぜか基本転写因子では、呼び方は「基本」が先に来るので注意)

リボソームのRNAへの結合について説明せよ

・原核生物では、mRNAの開始コドンの上流にGGAGGAというRBS(リボソーム結合部位)が存在する。Shine-Dalgarno配列とも呼ばれる。真核細胞ではRNAの5’キャップ構造が認識され、その後リボソームがRNA上を3’方向へ滑っていく。ウイルスのRNAではIRESがリボソーム結合部位となっている。
memo:
翻訳については、イラストで記憶に印象付けるのがよさそう。とくにリボソームRNAのところは複雑。

tRNAについて説明せよ

・tRNAはクローバー状の構造を持つ小さなRNAで、一方にアミノ酸結合部位、他方にアンチコドン(塩基対)を持つ。tRNAは特殊な塩基も含んでいる。tRNAの3’末端のCAAが(塩基対を形成せずに)飛び出しており、このA(のNH2)にアミノ酸(のカルボキシル基)が結合する(このときATPが必要)。アミノ酸を結合したtRNAをアミノアシルtRNAと呼ぶ。アミノ酸を結合させる、アミノアシルtRNA合成酵素はアミノ酸の種類に対応して20種類ある。
・リボソーム内にE, P, Aサイトがあり、それぞれExit, ペプチジルtRNA, アミノアシルtRNAの意味。真ん中のPサイトではポリペプチド鎖にtRNAが結合している(=ペプチジルtRNA)参考イラスト
ポリペプチドのカルボキシル基が転移してペプチド結合を形成する(このアミノ酸転移反応(ペプチジル基転移反応)を触媒するのがリボソームRNAである)。


変異を場合わけて説明せよ(点変異についてはさらにカテゴライズせよ)

・点突然変異はその帰結からしてナンセンス変異(終始コドンにより翻訳停止)、ミスセンス変異(アミノ酸が変わる)、サイレント変異(アミノ酸が変わらない)、が挙げられる。ほかに、フレームシフト変異とスプライシング変異が挙げられる。